宗教研究
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スリランカにおける仏教とキリスト教の歴史的対論 : 「パーナドゥラー論争」の意義(<特集>宗教批判の諸相)
釈 悟震
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2008 年 82 巻 2 号 p. 523-546

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抄録
スリランカ仏教は、アショーカ王の時代以来の長い歴史を有する。しかし、この長い同国の仏教の歴史は、決して平坦ではなかった。一六世紀以降のヨーロッパ人によるスリランカ支配は、必然的にキリスト教の布教、とりもなおさず仏教への圧迫さらに弾圧となって現われた。特にイギリスの植民地支配時代、スリランカの仏教は、存亡の危機に直面した。その時、仏教僧侶と二人のキリスト教の牧師との間に、激しい教理論争が繰り広げられた。その結果は仏教が勝利したとされるが、このことがスリランカ仏教復興の原動力となった。特に、仏教の近代化やその復興に功績の大きかったオールコット大佐が、仏教の支援者となったのもこの討論の結果である。そして、彼らの仏教復興運動は、全世界に波及しインドや日本の復興や近代化にも影響を与えた。一九世紀のスリランカの田舎で行われた仏教とキリスト教の討論は、仏教の近代にとって看過できない大きな意味を有するものであった。しかし、この討論についての学術的研究は、殆どなされていない。本稿では、この忘れ去られた仏教の近代化の出発点ともなった討論とその意義について検討する。
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© 2008 日本宗教学会
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