抄録
オックスフォードグループと呼ばれた道徳改革運動の宗教的意義について考察する。この運動は道徳再武装と改称し、二〇世紀前半から半ばにかけて、欧米以外の諸国も含めた国際的な交流の機会を提供、諸国の政治・経済・文化に関わる、日本も含むエリートたちに熱心に支持された。支持の背景には宗教運動としての諸側面もあった。この論文では、神にゆだねること(Surrender)と、祈りの中で神からメッセージを受けるお導き(Guidance)という二つの実践について述べる。これら二つの実践は、参加者の自己と宗教・道徳伝統との間の不一致を整理し、両者を再接続させるものである。実践によって人生の変革(Life Change)を体験した人々は、宗教活動にも、またそれを応用した上述の国際交流にも、諸職業活動にも積極的に参与した。