宗教研究
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ザラスシュトラの預言者化 : 一〇世紀アラビア語文献に見るアーリア人神官からセム的預言者への変貌
青木 健
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2009 年 83 巻 3 号 p. 837-860

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抄録

本論文は、現在までのザラスシュトラ研究の回顧から出発する。近年の研究によって、ザラスシュトラ観には、時代と共に変遷があることが明らかにされた。特に、一〇〜一三世紀に、ザラスシュトラ観が転回したことが確認されている。だが、この時期はゾロアスター教の内在的な文献を欠き、シリア語・アラビア語文献に頼って研究を進めなくてはならない。而して、二〇世紀半ば以降、この時期のイスマーイール派ペルシア学派文献の校訂出版が相次いだ。そこで、本論文ではナサフィー・ラーズィー論争に関するアラビア語テキストを主に、ザラスシュトラ観が「神官から預言者へ」変わる過程を検証する。最後に、ラーズィーがシリア教会に倣ってザラスシュトラをセム的一神教の異端と位置付けようとしたのに対し、ナサフィーは彼をセム的一神教の預言者と捉えようとして論争した経緯を明らかにする。結局、後者がイスラーム世界での共通認識になってゆくのである。

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© 2009 日本宗教学会
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