2010 年 84 巻 2 号 p. 309-330
小論では、スピリチュアリティ研究の新しい領域を探求するために、親密圏の問題を論じていく。親密圏とは、個人の生が、身近な他者との親密な関係性によって支えられる場、ないしそのような理想状態のことであるが、スピリチュアリティ研究ではほとんど正面から論じられることはなかった。まず最初に、スピリチュアリティ概念の隆盛を再検討し、次に親密圏・公共圏概念と、それが注目されている背景について論じる。そしてさらに未開拓の領域として、司法における様々な新しい試みとスピリチュアリティとの関係についても考察する。典型的には、親密圏におけるセラピー的な場での、目に見えないつながりの自覚や、個人の尊厳の回復が、スピリチュアルなプロセスであると認識される可能性がある。