宗教研究
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見神と自然をめぐる思索と交錯 : 綱島梁川と内村鑑三
柴田 真希都
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2011 年 85 巻 1 号 p. 125-149

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抄録

本稿は、神との出会いにおける自然の役割や位置づけという観点から、綱島梁川と内村鑑三を取り上げる。梁川の見神の実験(一九〇五年)に端を発する見神流行の最中に、鑑三は「真の見神とは何か」という問いをたてる。彼は自身の生活経験と聖書研究から、梁川の見神記述にはない二つの見神の方途を導く。一つは<イエスを介して>であり、もう一つは<自然を通して>であった。鑑三は以後も、聖書研究を通じ、折りに触れて見神の標準と究極についての思索を紡いでいく。彼の見神論は彼の聖書研究の深まりに呼応するものであり、「ロマ書」や「ヨハネの黙示録」の言説から救済史における自然の宇宙論的意義を見いだすものであった。彼は、自然が神へと至る健全な媒体であることを確信する一方で、自然を排したところにこそ真実の神が立ち現れるという境地にも出くわす。梁川のような見神の実験を持たなかった鑑三が、自然を神と出会う際に重要な役割を果たすものと位置づけた軌跡を描く。

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