宗教研究
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明治三〇年代における「修養」概念と将来の宗教の構想
栗田 英彦
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2015 年 89 巻 3 号 p. 471-494

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抄録

本論文では、哲学者・井上哲次郎によって構想された将来の宗教-「倫理的宗教」-と、それに対する改革派宗教者らの批判から、「修養」と呼ばれる宗教性を帯びたカテゴリーが生まれてきたことを論じる。明治三〇年代における教育からの宗教の排除と倫理教育への宗教の必要性という矛盾した要求のなかで、井上も宗教者らも新しい宗教のあり方を模索していた。それゆえ、宗教者たちは倫理的宗教論の抽象性を批判しつつ、その諸聖賢などの理想の人格や内観や坐禅といった具体的な実践をそこに結びつけることで、より実践的な倫理的宗教、すなわち「修養」を生み出した。さまざまな論者によって「修養」概念は用いられ、倫理と宗教、宗教と宗教の境界を超えて展開する超宗教的なカテゴリーとして、戦前日本で幅広い影響を与えることになったのである。

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© 2015 日本宗教学会
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