2019 年 93 巻 2 号 p. 79-106
既成宗教との対比で語られるスピリチュアリティではあるが、フェミニスト宗教学者のウルスラ・キングは多くの女性たちが自分自身のスピリチュアルな経験と思いを語りだしたものであり、既成宗教の内外で起きている動きであると指摘している。現代の日本のスピリチュアリティの動きは、ジェンダー規範との矛盾の中で日々苦しむ女性の状況と無縁ではない。本稿では現代のスピリチュアリティを、生き難さを感じる女性たちが自分の人生の意味と充実感を見出して、日常生活の中に変化を作り出す動きとしてとらえ、それを成立させている女性たちのつながりに注目をする。スピリチュアリティは、ヒーラーとクライエントという関係のみではなく、小さなヒーリング・イベントを地元で開催する人々や、お客さんの悩みの解決の一助を提供したいと考えるレストランのオーナー、イベントやレストランを訪れるさまざまなお客さんなど、多様な人々を通して広まっている。