2017 年 7 巻 2 号 p. 131-141
1990年に日米EUの産官6団体で発足した日米EU医薬品規制調和国際会議 (現 医薬品規制調和国際会議 : ICH) は, 発足から25年を迎えた2015年10月にICH協会として法人化され, 加盟団体のさらなる拡大・国際化やICHガイドラインの実施基盤の拡充が進められつつある. ICHでは, これまでに80超のさまざまなトピックに関するガイドラインを調和 (合意) してきており, ガイドラインの作成は, 今後もICH活動の中心に位置づけられる. その一方, 主要なトピックはほぼ網羅され, 今後ICH会員構成の多様化が進むなかで, ICHガイドラインの作成難易度はより高くなると見込まれる. 本稿では, ICH協会における新規トピック提案・選定の仕組みやプロセスを概観した後に, 2016年11月に開催された直近のICH大阪会合での動向に触れつつ, 新規トピックにまつわる課題と将来展望について考察した. ICH大阪会合では複数の新規トピックを包括的に取り扱う 「戦略テーマ」 が初めて採択され, 今後は 「戦略テーマ」 に沿った新規トピックの議論も活発化すると予測される. このような状況を機会ととらえ, 世界各地での新薬の患者アクセス向上に資する有益なICHガイドラインを作成・普及させていくには, ①さまざまなステークホルダーとの対話促進, ②高度専門家の計画的な発掘・育成, の2点が重要であると考える. 「国際調和は人から始まる」 という基本概念に立脚し, 日本発のICHガイドラインが一つでも多く作成されるような環境整備を進めていきたい.