2003 年 42 巻 4 号 p. 222-229
人間行動が要因となる事件・事故が近年顕著となっており,これに対する社会の受け止め方への配慮の重みも増してきている.これまでのリスクマネジメント活動では,リスク要因やリスク影響の評価へ多様な人間行動の影響を反映させることは困難であった.そこで本稿では,リスクマネジメントを継続.的に組織に定着させるリスクマネジメントシステムヘ,人間に着眼したモデルを組み込むことを示す.まず,キャッチアップオペレーションと呼ぶ機動的な組織対応の枠組みを定義し,つぎに,リスクが与える影響の連鎖をリスクエフェクトダイナミクスという概念でモデル化した.さらにキャッチアップオペレーションの一例として,モラルハザードを同定し組織状態を把握する考え方を示した.これらの取組みによりマネジメントシステムをより実践的なものへとしていくことが可能と考える.