2017 年 56 巻 5 号 p. 320-329
安全確保は,社会の強い要請である.しかし,多くの人々は,安全は所与という認識で,“安全・安心”と叫ぶだけで,自分の役割を果たそうとしない.また,医療の安全に関する社会および国民と医療者の認識の相違が顕著である.医療界においても,認識が一致しない. 医療の安全を確保するために,安全,安心,信頼,信頼性,リスク等の定義を明確にし,定義とその解釈に関して共通の認識を持つことが必要である. 医療の安全確保に関する関係者の認識の違いを検討し,安全に関する基本的考え方を提示し,主に,病院における医療提供・受診(利用)に関する安全を検討する. 安全確保は,学問(理論)ではなく,学問に基づいた実践である.筆者が,医療界内外と協力して実践している医療の安全確保に関する活動を報告する.