近年,プロセス産業の重大事故防止の観点から安全文化の状態を評価し,その結果判明した弱点に対して対策を講ずる取り組みが行われてきているが,その際評価項目に対する表面的な対策のみでは十分な効果を期待できないことがある.これは,安全文化が3 層からなる組織文化の一側面と考えられ,第1 層である人工の産物への対応だけでなく,第2 層の信奉する価値観への対応が必要となるためである.なお,各層の詳細な説明は本文を参照されたい.そこで,筆者は,保安力第三者評価階層別インタビューで記録された意見を安全文化上重要な項目に分類し,安全文化の状態が優良と評価された事業所が保有する価値観を表す意見を抽出することを試みた.抽出された価値観を表す意見は,該当項目の対策を検討する際に主体となる階層の醸成すべき価値観の一例として活用できると考える.