2017 年 56 巻 6 号 p. 475-481
近年の相次ぐ甚大な気象災害の発生を受けて,防災・減災のための取り組みが進められている.気象災害に強い安全・安心な社会づくりには,より迅速かつ正確な気象予測情報が必要であり,このためには,基盤となる観測技術の高度化が欠かせない.近年,これまでにない高い頻度で全天の3 次元空間を観測する,気象用フェーズドアレイレーダーが登場した.極めて高い時空間分解能を持つこの最新レーダーは,突発的に発生する気象災害の予測を高度化するための革新的技術と考えられ,現在,防災利用のための研究開発が進められている.本稿では,フェーズドアレイレーダーに関する研究開発の動向と,気象災害予測への活用に向けた今後の展望をまとめる.