2019 年 58 巻 6 号 p. 439-445
情報やインターネットを使った企業のサービスを受けるにあたって顧客が感じているリスクの中には,従来のリスクとは異なる特徴を持ったものがある.本稿は,今後の研究の進展を目指して,この特徴を考慮したリスクコミュニケーションとその課題,および,当該のリスクコミュニケーションの有用性について示すことを目的とする.はじめに,顧客情報の利活用に関するリスクと情報セキュリティのリスクの2 つを選定し,これらのリスクについてのコミュニケーションが顧客の懸念を低下させることに効果的であるか検証した.次に,リスク情報や認識の共有を目的として企業から顧客に働きかける場合,これを困難にする心理的要因を紹介した.最後に,情報化社会においてはこれまで以上に,リスクコミュニケーションが企業にとって有用なリスクマネジメント手法となり得る可能性を示した.