事故の詳しい情報や教訓は報告書に自然言語の形で記録され,膨大な量が社会に蓄積されている.これらを活用できれば安全向上に大いに効果があるだろう.だが大量の自然言語データは統計処理が難しく,活用が進んでいなかった.本論文では,事故予防に役立つ知識を導き出す自然言語処理の技法を提案する.事故予防には,事故のパターンを把握することが必要となる.そこでは,事故の過程におけるシーンを計算機が自動的に抽出し,事故の進展過程でシーンがどのように遷移するかを把握する.また,被害無しで済んだヒヤリハットについて,それに最も類似する歴史的重大事故を検索し,あり得たかもしれない被害を知るという活用法もある.複数の報告を組み合わせることで未発生だが起こりそうな事故のリスクも指摘できる.本論文では,航空や石油精製での報告書データ集を題材にした実施例を紹介する.