2020 年 59 巻 6 号 p. 416-423
本稿では,船舶用ディーゼルエンジンを対象として,潤滑油分析と機械学習アルゴリズムに基づく状態監視保全手法について検討した.実際に定常運航する大型船舶から潤滑油を採取,分析することにより摩耗に関連する元素濃度のデータを取得した.そのデータに対し,機械学習の一種であるガウシアングラフィカルモデルを適用することにより,先行研究同様に油内のFe 濃度に着目することに加え,油内のその他の元素との関係性に着目することによりこれまでの手法では検知できなかった摩耗状態の推定を行った.また,グラフの差を定量化した異常スコアの提案を行い,正常運転状態での航路の影響や摩耗モードの推定が可能であることを確認した.これらの結果より,既存の状態監視手法に比べ,一般性のある閾値設定の可能性や,既存手法では難しかった段階的な状態推定が期待できる.