安全工学
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事故情報を自社の安全にいかに役立てるか ―第3 回 福島原発事故から学ぶ(2 )―
中村 昌允
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2021 年 60 巻 1 号 p. 53-60

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抄録

福島原発事故発生時に,吉田昌郎所長を初めとする技術者達は極限状態における生死を賭けた判断と行動をした. 一つ目の事例として,ベント開放のために電源喪失時に真っ暗闇の建屋の中に突入した行動,二つ目の事例として,1,3,4 号機が爆発し2 号機も爆発寸前の状態ある危機的状態において現場に踏み止まった行動を取り上げ,事故報告書と吉田調書を基に,緊急事態発生時の技術者の判断と行動を検証する. 技術者達は自らの危険を感じながらも,技術・技能を有するが故に,「自分が対応しなければ,もっと悲惨な状況になる」という認識のもとに決死の行動を取った.それは技術者の「性(さが)」ともいえる.根底には,技術者としての誠実な行動とお互いの信頼があった. 問われていることは,「一人の技術者として,自分はどう判断行動するか」,「指導者として部下に指示を出せるか」である.

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