箱庭療法学研究
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外国語論文
箱庭制作者の脳を探る
1事例を通して見た箱庭制作者の脳活動
秋本 倫子古川 佳子伊藤 淳子
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2018 年 30 巻 3 号 p. 73-84

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抄録

著者らは,箱庭制作セッションをシミュレートし,NIRS(近赤外分光法)を用いて箱庭制作における脳のメカニズムを探る研究をしている。ここではそのうちの1例を事例研究として報告した。NIRS信号の変化,ビデオの行動データ,および箱庭制作後のインタビュー・データを併せて検討した結果,箱庭制作は,前頭前野領域および側頭葉領域の動的カップリング(結合)を開始させ,記憶の想起と,想起された記憶に程良い量の認知的コントロールを加えて再構築することを可能にするのではないかと考えられた。また,箱庭制作が“右脳課題”ではなく左右両大脳半球が関与する可能性も示唆された。本研究により,神経画像テクニックであるNIRSを用いて,箱庭療法の基盤にある脳機能を探究する新しい研究視座が開かれた。箱庭療法の複雑なプロセスを説明するためには,さらに研究を重ねて一貫性のある結果を得ることが必要である。

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© 2018 日本箱庭療法学会
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