2018 年 31 巻 1 号 p. 3-14
本稿では,潰瘍性大腸炎を抱える思春期女子との心理療法過程を報告する。友人関係や学校生活のストレスを主訴に心理療法を開始したクライエントは,箱庭や描画などのイメージを用いて自身の抱える腸疾患の修復をしていくプロセスと,家族や友人との関係を修復していくプロセスをパラレルに経ることで,身体の病を抱えながらも主体的に生きられるように変化していった。身体疾患を抱える子どもに対しての心理的アプローチであっても,必ずしも身体が心理療法の中心のテーマになるとは限らない。身体にとらわれずにクライエントの心理的課題や家族の置かれている状況をセラピストが共に抱えることがクライエントの治療に重要な役割を果たすと考えられる。病気を抱える器や安定してクライエントを支える場が機能しはじめると,クライエントは自身の身体と向き合うことができ,主体的に身体の病を抱えながら生きることにつながると言える。