産業衛生学雑誌
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職場復帰と適正配置についての実態調査 : 就業規則から見た制度とその運用
田中 雅人寶珠山 務高橋 謙伊藤 敬大久保 利晃
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1998 年 40 巻 5 号 p. 214-221

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抄録

日本の企業における職場復帰および適正配置に関し, 現行の制度とその運用について実態調査を行った.1990年版日本産業衛生学会名簿より, 専属産業医351名を選出し, 自記式の質問紙を郵送した.質問項目は, 企業の規模および業種, 産業保健スタッフの構成, 職場復帰判定の手順, 傷病休職に関する就業規則の内容, 適正配置基準, 職場復帰のための訓練的就労措置に関するものであった.産業医より質問紙の回答のあった145事業所のうち(回答率:41%), 123カ所(85%)が製造業事業所であった.総従業員数で階層化したところ, 41カ所(28%)が3千人以上, 66カ所(46%)が1千人以上3千人未満, 26カ所(18%)が1千人未満, 12カ所(8%)が不明であった.就業規則に傷病休職の規定があった事業所は, 144カ所(99%)であった.傷病休職中の賃金保障給付主体については, 66カ所(48%)が会社と健保, 61カ所(44%)が健保のみとそれぞれ回答した.職場復帰判定を実施していた事業所は136カ所(94%)であり, その判定手続きには, 産業保健スタッフおよびその他の関連スタッフが関与していた.多くの判定事例で, 産業医がその判定手続きに関与し, また最終判断を下す権限を付与されていた.総従業員3千人以上の規模の事業所においては, 長期の傷病休業事例に対し, 短期の傷病休業事例に比べて, より詳細な職場復帰判定手続きが課されていた.適正配置を評価する目的で, 復帰する際に, 追加的な健康診断を行っていた事業所は119カ所(88%)であった.適正配置に関する基準を有していた事業所は, 64カ所(47%)であった.職場復帰のための訓練的就労措置については118カ所(83%)が実施しており, 主に勤務制限や作業負荷軽減などを取り入れていた.現行の職場復帰および適正配置制度は, 総従業員数3千人以上の事業所において, それが3千人未満の事業所に比べて, より有効に利用されていることが示唆された.

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© 1998 公益社団法人 日本産業衛生学会
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