産業衛生学雑誌
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総 説
ベンチマークドース法の臨床的基準をもつ健康影響指標への適用
村田 勝敬苅田 香苗堀口 兵剛岩田 豊人広瀬 明彦
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2011 年 53 巻 3 号 p. 67

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抄録

ベンチマークドース法の臨床的基準をもつ健康影響指標への適用:村田勝敬ほか.秋田大学大学院医学系研究科環境保健学講座―目的:欧州食品安全機関(EFSA)は「リスク評価におけるベンチマークドース法の利用」を発表し,これまで伝統的に用いられてきた無毒性量の代わりに,ベンチマークドース(BMD)法が健康指針値や曝露マージンの基準点を決定する選択肢として使用されるべきと勧告した.またBMD法は全ての化学物質,さらには疫学データの量-反応評価にも広く適用可能であると述べている.BMD法が初めて提唱された時,BMD法は低レベルではあるが測定可能な標的臓器影響を引き起こす量(臨界濃度)を推定する手法として期待されていた.本稿は,上述のBMD法が臨床的基準をもつ健康影響指標に適用可能かどうか検討した. 方法:臨床的基準のある疫学データを用いて,上のBMD法と古典的BMD法(Hybrid法)の比較を行った. 結果:EFSAが推奨するBMDの95%信頼下限値はHybrid法のそれよりもかなり低い傾向がある.また,前者の方法は,交絡因子の影響を調整することは難しいが,既報の量-反応データにも容易に適用可能である.一方,Hybrid法で計算される健康影響指標のカットオフ値は臨床的基準とほぼ一致する. 結論:EFSAが推奨するBMD法を用いて得られる有害物質のより低い基準点によって,ヒトへの安全性は大いに保証されよう.しかし,臨床的基準に照らすと疫学データへのBMD法の適用は必ずしも毒性学的意義を反映しているとは言えない.
(産衛誌2011; 53: 67-77)

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