産業衛生学雑誌
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原著
うつにより休業した従業員の職場復帰における産業看護職の支援の構造
畑中 純子
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2016 年 58 巻 4 号 p. 109-117

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抄録

目的:本研究はうつにより休業した従業員の職場復帰において産業看護職が行う個人支援の構造を明らかにすることを目的とした.対象と方法:うつによる休業からの職場復帰支援を行っている産業看護職10名を対象に半構造化面接を実施した.データ分析には修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ法を用いた.結果:分析の結果,9つのカテゴリーが生成された.職場復帰支援は(1)病状回復優先期,(2)復帰準備期,(3)職場適応期の3つの時期に大別された.それぞれの時期での看護行為は,〈療養できる環境整備〉〈つなぐ〉〈周りから支持〉という間接支援と,従業員との〈関係性の構築〉により進展していく〈療養のための心の準備への支援〉〈社会的心理的課題克服への支援〉〈自立への支援〉への直接支援とに分けられた.これらの支援の根底には産業看護職が従業員と職場の双方にとって〈有益となる職場復帰への支援〉を行うという思いがあった.産業看護職によるこれらの支援過程は,従業員がうつにより休業したことで失った自信を徐々に取り戻して,円滑な職場復帰を遂げるための【自信回復への支援プロセス】であった.考察:職場復帰には病状に応じた各期の課題があり,産業看護職は従業員がそれぞれの課題を乗り越えられるための支援を行っていたと考えられた.また,職場復帰支援では職場の協力がその成否に大きく影響するといわれており,従業員への直接支援のみならず関係者との調整が従業員への間接支援として必要であったと推察された.結論:職場復帰の各期において間接・直接支援を行うことにより,従業員が自信回復を図れるためのプロセスを支援することが,産業看護職の支援の構造であると示唆された.

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© 2016 公益社団法人 日本産業衛生学会
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