産業衛生学雑誌
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原著
就労男性における飲酒と喫煙習慣がおよぼす脳血管疾患の発症リスクへの影響
畑中 陽子下方 敬子大杉 茂樹金子 典代
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2016 年 58 巻 5 号 p. 155-163

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抄録

目的:20歳から46歳の男性従業員について,飲酒および喫煙習慣が在職中における脳血管疾患の発症リスクに与える影響を明確化することを目的に,定期健康診断(以下,定期健診)データと診療報酬明細書(以下,レセプト)データに基づき,年齢群別に追跡したので報告する.対象と方法:1994年時点で20歳から46歳である男性従業員29,048人のうち,1994年から2003年までの定期健診データが欠損値なく存在する25,084人(86.4%)について,問診による飲酒習慣と喫煙習慣がそれぞれ10年間継続している11,784人(40.6%)を本研究の対象とした.1994年時点の年齢で20歳代であった若年群と,30歳代から40歳代の中高年群の二群に大別し,飲酒習慣と喫煙習慣別に2004年から2013年まで10年間の脳血管疾患の発症リスクをCox比例ハザードモデルを用いて検証した.エンドポイントは,レセプトデータ,資格喪失データより脳血管疾患による入院または死亡の場合にイベント発生とした.結果:飲酒習慣2区分(非飲酒~時々飲酒,毎日飲酒)および喫煙習慣2区分(非喫煙,喫煙10年継続)の計4区分ごとに脳血管疾患の発症リスクを多変量解析した結果,年齢,Body Mass Index,収縮期血圧,中性脂肪,総コレステロールで調整したハザード比は,非飲酒~時々飲酒かつ非喫煙群と比較して,毎日飲酒かつ喫煙群は若年群(20-29歳群)で3.81倍(95% Confidence Interval(以下,CI):1.40-10.41),中高年群(30-46歳群)では2.31倍(95%CI:1.27-4.17)といずれも有意に高かった.考察:20-29歳,30-46歳の男性について脳血管疾患の発症リスクを年齢群別に検討した結果,10年間継続して毎日飲酒かつ喫煙している群はその後の発症リスクが上昇した.職域における脳血管疾患の発症を予防するためには,飲酒行動と喫煙行動に対し,年齢層にかかわらず行動変容支援を行う必要性が示唆された.

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