産業衛生学雑誌
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調査報告
訪問看護師の夜間オンコール業務と負担感および睡眠への影響
菊地 由紀子石井 範子
著者情報
キーワード: Burden, On-call, Sleep, Visiting nurse
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2016 年 58 巻 6 号 p. 271-279

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抄録

目的:本研究は,訪問看護師の夜間のオンコール業務による負担感および睡眠への影響を明らかにすることを目的とした.方法:訪問看護師614人に対して質問紙調査を行い,対象の概要,夜間オンコールの担当状況,オンコール担当による精神的負担感,身体的負担感,睡眠の状況を調査した.オンコール担当日と非担当日の睡眠の状況を比較し,また,オンコール担当による負担感や睡眠の状況に影響する要因を検討するために,『精神的負担あり』『身体的負担あり』睡眠の状況『不良』を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った.結果:有効回答であった187人を分析対象とした(有効回答率30.5%).オンコールを担当することを,81.3%が精神的に負担に感じており,69.4%が身体的に負担に感じていた.オンコール担当日は非担当日に比べ,睡眠時間は短く,中途覚醒回数が多かった.また睡眠の深さ,良眠感,すっきり感,睡眠満足感,入眠困難感の得点が悪化していた.オンコール担当による負担感や睡眠の状況に影響する要因を検討した結果,1ヶ月のコールを受けた回数が3回以上で,『精神的負担あり』および『身体的負担あり』の年齢調整後のオッズ比がそれぞれ2.51(95%信頼区間:1.05-6.00),2.44(95%信頼区間:1.20-5.00)で,有意に高かった.結論:1ヶ月のコールを受けた回数が3回以上で精神的負担および身体的負担を感じる者が多いことが明らかになった.オンコール担当日は非担当日に比べて睡眠の状況が悪いことがわかった.オンコール担当に対する手当,および休息や休日を適切に設ける必要があることが示唆された.

I. 研究の背景

我が国では,入院医療から在宅療養への移行が急速に進められており,訪問看護師に期待される役割はますます大きくなっている.訪問看護事業所において,利用者からの相談に24時間対応できる体制は,利用者の在宅療養を支える重要なサービスであり,訪問看護アクションプラン20251)においても「日本全国どこでも24時間365日,いつでも必要な質の高い訪問看護サービスを届ける仕組みを作ること」が,訪問看護の重要な課題であるとされている.しかし,このようなサービスを提供するために,訪問看護師は夜間や休日でも,携帯電話を24時間持参して待機するオンコール業務に就きながら過ごしているのが現状である.

医療従事者の夜間のオンコール業務の形態としては,即時に直接対応できるよう医療施設内に留まりながら待機するものや,医療施設外で日常生活を送りつつ必要時は短時間で駆けつけることができるよう待機するもの等がある.諸外国における医師を対象とした研究において,夜間のオンコール業務は安定した睡眠の妨げとなること2-4),心臓自律神経5,6)や内分泌5-7)へ影響を及ぼすこと,また感情の不活化等の心理的な問題5)を引き起こすことが示唆されている.我が国における研究においては,医師のオンコール業務は抑うつとの関連があること8)や,オンコール業務に就いている病院勤務看護師は疲労を強く自覚していること9)が示されている.しかし,我が国の訪問看護師の夜間オンコール業務に着目し,心身への影響を探った研究は見当たらない.訪問看護師の夜間オンコール業務は,日常生活を送りながら待機する形態が主である.たとえ自宅での待機であっても,食事や入浴,睡眠中などいつ来るかわからない不確かな電話連絡に対応しなければならないという心理的な負担を伴うことから,効果的な睡眠や休息を阻害する要因になっているものと推測されるが,明らかではない.

そこで本研究では,我が国の訪問看護師に焦点を当て,夜間オンコール業務による負担感および睡眠への影響を明らかにすることを目的とした.本研究の結果は,今後ますます活躍が期待される訪問看護師が健康的に働くための勤務体制を整える上で,基礎資料となりうるものと考える.

II. 用語の操作的定義

1. オンコール業務

訪問看護師が,療養者や家族からの電話連絡に備えて常に携帯電話を持ち待機し,連絡があった場合には電話で相談に応じたり,療養者の自宅へ訪問したりする業務とする.

2. オンコール担当

訪問看護師が夜間のオンコール業務に就くこと,とする.

また,オンコールを担当した1ヶ月当たりの回数を「オンコール担当回数」とする.オンコール担当中は,療養者やその家族からの電話の有無に関わらず,携帯電話を持って待機している.実際に療養者や家族からの電話があった1ヶ月当たりの回数を「コールを受けた回数」とする.コールを受けた場合は,その内容によって,電話で対応できるものもあれば,療養者の急変や看取り,使用中の医療機器トラブルなど,緊急に療養者の自宅を訪問して対応しなければならない場合もある.緊急に療養者の自宅を訪問して対応した1ヶ月当たりの回数を「緊急訪問した回数」とする.

3. オンコール担当日の睡眠

訪問看護師の日中の勤務を終えた後の通常の夜間睡眠に対して,日中の勤務に引き続き夜間のオンコール業務に就きながら睡眠をとること,とする.

III. 方法

1. 対象

東北地方の4県(A県および隣県3県)の訪問看護事業所に勤務して6ヶ月以上の女性の訪問看護師,614人を対象とした.

2. 調査期間

2015年2月~3月

3. 調査内容

1) 対象の概要

訪問看護師の年齢,看護師経験年数,訪問看護師経験年数,現事業所での経験年数,役職の有無,オンコール担当の経験,事業所の経営主体,勤務する看護師数,訪問看護利用登録者数,オンコール体制の整備状況,オンコール利用登録者数,一晩にオンコールを担当する訪問看護師数,コール対応方法,オンコール担当日の勤務,オンコール担当翌日の勤務,オンコール担当の手当.

2) オンコールの担当状況

最近1ヶ月のオンコール担当回数,コールを受けた回数,緊急訪問した回数.

3) オンコール担当の負担感

オンコール担当による精神的負担および身体的負担について,「1全く負担と感じない」「2ほとんど負担と感じない」「3負担と感じる」「4非常に負担と感じる」の4件法で尋ね得点化した.また,精神的負担および身体的負担それぞれについて「3負担と感じる」「4非常に負担と感じる」と回答した者を『負担あり』と分類した.

4) 睡眠の状況

Ellisらが作成した睡眠質問票10)を参考に,睡眠時間,中途覚醒回数,睡眠の深さ,良眠感,起床時すっきり感,睡眠満足感,入眠困難感の7項目について尋ねた.このうち,睡眠の深さ,良眠感,起床時すっきり感,睡眠満足感,入眠困難感の5項目については,次のように得点化した.得点が高いほど睡眠の状況が悪いことを示す.

・睡眠の深さ…1深い,2やや深い,3どちらかというと深い,4どちらかというと浅い,5やや浅い,6浅い,7大変浅い

・良眠感…1大変よく眠れる,2よい,3ややよい,4やや悪い,5悪い,6大変悪い

・すっきり感…1大変すっきりしている,2すっきり,3ややすっきり,4少し眠い,5わりと眠い,6大変眠い

・睡眠満足感…1十分満足,2わりと満足,3少し不満足,4わりと不満足,5大変不満足

・入眠困難感…1眠りにつくのはほとんど難しくない,2少し難しい,3かなり難しい,4きわめて難しい

睡眠の深さ「4どちらかというと浅い~7大変浅い」,良眠感「4やや悪い~6大変悪い」,すっきり感「4少し眠い~6大変眠い」,睡眠満足感「3少し不満足~5大変不満足」,入眠困難感「2少し難しい~4きわめて難しい」を,5項目それぞれの『不良』と分類した.

現在オンオールを担当している者には「オンコール担当日」および「オンコール非担当日」それぞれの睡眠について,評価してもらった.なお,睡眠を評価する日は特に指定せず,思い起こしで回答してもらった.

4. 対象の抽出とデータの収集方法

厚生労働省の介護事業所・生活関連情報検索システム11)により,2015年1月現在で訪問看護サービスを有する事業所307箇所を抽出した.この307箇所の訪問看護事業所の管理者に,研究の説明文と研究協力の依頼文等を郵送した.同意の得られた管理者から,対象となる訪問看護師2人ずつを募ってもらい,調査票や返信用封筒等を渡してもらった.同意の得られた訪問看護師に,回答後の調査票を個別に封書して返送してもらった.

5. 分析方法

基本統計量を算出し,対象の概要やオンコールの担当状況,オンコール担当の負担感について把握した.睡眠の状況については,オンコール担当の有無による得点の差を対応のあるt検定にて検討した.オンコール担当による負担感や睡眠の状況に関連があると予測される,オンコールの担当状況(1ヶ月のオンコール担当回数,コールを受けた回数,緊急訪問した回数,看護師一人当たりのオンコール担当者数)およびその他の変数(訪問看護師の年齢,訪問看護師経験年数,役職有無)を抽出した.これらを中央値で2群に分類し,精神的負担,身体的負担,および睡眠の状況7項目の得点の差をt検定にて検討した.オンコール担当による負担感や睡眠の状況に影響する要因を検討するために,『精神的負担あり』,『身体的負担あり』,『睡眠の状況5項目それぞれの不良』を目的変数とし,オンコールの担当状況を説明変数とし,調整因子として年齢を投入した単変量ロジスティック回帰分析を行った.なお,投入した変数についてはVIFの値から多重共線性がないことを確認した.

統計解析にはSPSS for windows 22.0(日本IBM)を使用し,有意水準は5%とした.

IV. 倫理的配慮

訪問看護事業所の管理者及び訪問看護師に対して,文書で研究の趣旨と以下のことを説明した.1)調査への参加は自由意思であること,2)不参加や中断により不利益を被ることがないこと,3)調査は無記名で行うこと,4)得られた情報は匿名性を保ち厳重に管理すること,5)得られた情報は本研究以外には使用しないこと,6)結果は公表すること,7)研究終了後は質問紙を破棄すること,8)質問紙の回答をもって研究への参加の同意とみなすこと,である.

なお,本研究は秋田大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認を得て実施した(平成27年1月8日 医総第2127号).

V. 結果

194人から回答があった(回収率31.6%).そのうち,訪問看護事業所に勤務して6ヶ月に満たない者1人,オンコール担当の経験について未回答だった6人を除外した187人を分析対象とした(有効回答率30.5%).

1. 対象の概要およびオンコールの担当状況と負担感(表1

訪問看護師の年齢の平均±標準偏差は48.1±9.2歳,看護師経験23.6±10.0年,訪問看護師経験7.3±5.2年であり,役職に就いている者は95人(50.8%)であった.現在オンコールを担当している看護師は160人(85.6%)であった.

勤務する事業所の経営主体は医療法人が54件(28.9%)と最も多く,次いで営利法人34件(18.2%)であった.看護師数は常勤換算5.1±3.7人であり,訪問看護の利用登録者数は67.3±60.4人であった.すべての事業所がオンコール体制を整備しており,160件(85.6%)は緊急の訪問にも対応していた.オンコールの利用登録者は51.1±51.7人であり,一晩にオンコールを担当する看護師が「1人」である事業所が139件(74.3%)と最も多かった.コールへの対応方法は,「当番看護師がコールを受けて対応する」が143件(76.5%),「管理者がコールを受けて当番看護師へ連絡する」が20件(10.7%)であった.オンコールを担当する当日の勤務は184人(98.4%)が通常勤務であり,オンコールを担当した翌日の勤務も178人(95.2%)が通常勤務であった.オンコール担当の手当については,担当すると手当がつく者が142人(75.9%),コール対応や緊急訪問をすると手当がつく者が24人(12.8%),コールに対応し緊急訪問しても手当がない者が14人(7.5%)であった.

現在オンコールを担当している160人の看護師において,1ヶ月でオンコールを担当した回数は9.1±7.3回であり,そのうちコールに対応したのが2.9±3.5回,緊急訪問したのが1.1±1.5回,看護師一人当たりのオンコール担当者数は41.5±45.4人であった.オンコールを担当することによる精神的負担の得点は3.1±0.7点で,『精神的負担あり』は130人(81.3%)であった.身体的負担の得点は2.9±0.7点で,『身体的負担あり』は111人(69.4%)であった.

表1. 対象の概要  n=187
項目 人数(%)あるいは平均値±標準偏差
年齢(歳) 48.1±9.2
看護師経験(年) 23.6±10.0
訪問看護師経験(年) 7.3±5.2
現事業所での経験(年) 6.1±5.1
役職
就いている 95 (50.8)
就いていない 92 (49.2)
オンコール担当経験状況
担当している ※ 160 (85.6)
担当経験あるが現在は担当していない 11 (5.9)
担当経験なし 16 (8.6)
訪問看護事業所経営主体
医療法人 54 (28.9)
営利法人 34 (18.2)
協同組合 17 (9.1)
社団・財団法人 17 (9.1)
その他 65 (34.7)
勤務する看護師数(常勤換算)(人) 5.1±3.7
訪問看護利用登録者数(人) 67.3±60.4(min3,max314)
オンコール体制整備状況
コールのみに対応 27 (14.4)
コールに対応し緊急訪問にも対応 160 (85.6)
オンコール利用登録者数(人) 51.1±51.7
(min0,max207)
一晩にオンコール担当につく看護師数
1人 139 (74.3)
1.5人 7 (3.7)
2人 35 (18.7)
3人以上 6 (3.2)
コール対応方法
当番看護師が対応 143 (76.5)
管理者から当番看護師へ連絡 20 (10.7)
管理者がすべて対応 12 (6.4)
その他 12 (6.4)
オンコール担当日の勤務(複数選択)
通常勤務 184 (98.4)
その他 6 (3.2)
オンコール担当翌日の勤務(複数選択)
通常勤務 178 (95.2)
その他 33 (17.6)
オンコール担当の手当
担当すると手当あり 142 (75.9)
コール対応や緊急訪問すると手当あり 24 (12.8)
手当なし 14 (7.5)
その他 4 (2.1)
回答なし 3 (1.6)
※オンコール担当の内訳 n=160
オンコール担当回数(回/月) 9.1±7.3
コールを受けた回数(回/月) 2.9±3.5
緊急訪問した回数(回/月) 1.1±1.5
看護師一人当たりのオンコール担当者数(人) 41.5±45.4
オンコール担当による精神的負担(点) 3.1±0.7
オンコール担当による身体的負担(点) 2.9±0.7

2. 睡眠の状況(図1

オンコール担当日は非担当日に比べ,睡眠時間は短く(p<0.05),中途覚醒回数が多く(p<0.01),また睡眠の深さ,良眠感,すっきり感,睡眠満足感,入眠困難感の得点が高かった(p<0.01).

図1.

オンコール非担当日,担当日による睡眠状況

対応のあるt検定 p<0.05,p<0.01

睡眠の深さ,良眠感,すっきり感,睡眠満足度,入眠困難感は得点が高いほど状況が悪いことを示す

3. オンコール担当による負担感,睡眠の状況に影響を及ぼす要因の検討

各変数による精神的負担,身体的負担,および睡眠の状況7項目の得点の差を表2に示す.1ヶ月のオンコール担当回数が8回以下の群は,9回以上の群に比べて中途覚醒回数が多かった(p<0.05).1ヶ月のコールを受けた回数が3回以上の群は,2回以下の群に比べて精神的負担および身体的負担得点が高かった(p<0.01).1ヶ月の緊急訪問した回数が2回以上の群は,1回以下の群に比べて身体的負担および入眠困難感の得点が高かった(p<0.05).看護師一人当たりのオンコール担当患者数が26人以上の群は,25人以下の群に比べてすっきり感および睡眠満足感の得点が高かった(p<0.05).訪問看護経験が6年以下の群は,7年以上の群に比べて中途覚醒回数が多く(p<0.01),睡眠の深さおよび良眠感の得点が高かった(p<0.05).役職に就いていない群は,就いている群に比べて中途覚醒回数が多かった(p<0.05).

1ヶ月のオンコール担当回数,コールを受けた回数,緊急訪問した回数,看護師一人当たりのオンコール担当患者数による『精神的負担あり』『身体的負担あり』となる年齢調整後のオッズ比を表3に示す.1ヶ月のコールを受けた回数が3回以上の群は2回以下の群に比べて,『精神的負担あり』(オッズ比:2.51,95%信頼区間:1.05-6.00,p=0.040)『身体的負担あり』(オッズ比:2.44,95%信頼区間:1.20-5.00,p=0.014)となるオッズ比が有意に高かった.1ヶ月のオンコール担当回数および緊急訪問した回数,看護師一人当たりのオンコール担当患者数については『精神的負担あり』および『身体的負担あり』となる有意な関連はなかった.睡眠の状況5項目においては『不良』となるのに有意な関連を示す変数はなかった.

表2. 精神的負担,身体的負担,睡眠の状況と各変数の関係
精神的負担(点) p値 身体的負担(点) p値 睡眠時間(時間) p値 中途覚醒回数(回) p値 睡眠の深さ(点) p値 良眠感(点) p値 すっきり感(点) p値 睡眠満足度(点) p値 入眠困難感(点) p値
t検定 p<0.05,p<0.01
オンコール担当回数/月 8回以下 3.2 (0.7) 0.663 2.9 (0.7) 0.900 6.5 (1.0) 0.985 1.9 (1.6) 0.012 4.0 (1.5) 0.447 3.6 (1.2) 0.291 4.0 (1.2) 0.244 3.3 (1.0) 0.416 1.8 (0.8) 0.234
9回以上 3.1 (0.8) 2.9 (0.7) 6.5 (1.0) 1.3 (1.2) 3.8 (1.3) 3.4 (1.2) 3.8 (1.2) 3.1 (1.0) 1.7 (0.7)
コールを受けた回数/月 2回以下 2.9 (0.6) 0.001 2.7 (0.7) 0.003 6.4 (1.0) 0.171 1.6 (1.3) 0.795 4.0 (1.4) 0.377 3.5 (1.2) 0.747 3.8 (1.3) 0.860 3.2 (1.0) 0.860 1.7 (0.8) 0.903
3回以上 3.3 (0.7) 3.1 (0.7) 6.6 (1.0) 1.6 (1.5) 3.8 (1.4) 3.4 (1.2) 3.9 (1.2) 3.2 (1.0) 1.8 (0.8)
緊急訪問した回数/月 1回以下 3.1 (0.7) 0.112 2.8 (0.7) 0.010 6.5 (1.0) 0.453 1.5 (1.4) 0.698 3.8 (1.4) 0.291 3.4 (1.2) 0.290 3.7 (1.2) 0.130 3.1 (1.0) 0.076 1.6 (0.7) 0.040
2回以上 3.3 (0.8) 3.1 (0.8) 6.6 (1.0) 1.6 (1.3) 4.1 (1.3) 3.6 (1.1) 4.0 (1.2) 3.4 (1.0) 1.9 (0.8)
看護師一人当たりのオンコール担当患者数 25人以下 3.0 (0.7) 0.054 2.8 (0.7) 0.057 6.5 (0.9) 0.937 1.5 (1.3) 0.293 3.8 (1.3) 0.178 3.3 (1.2) 0.379 3.6 (1.2) 0.030 3.0 (0.9) 0.015 1.7 (0.7) 0.489
26人以上 3.3 (0.7) 3.1 (0.7) 6.5 (1.0) 1.7 (1.5) 4.1 (1.5) 3.5 (1.2) 4.1 (1.2) 3.4 (1.0) 1.8 (0.8)
訪問看護師の年齢 48歳以下 3.2 (0.7) 0.610 2.9 (0.7) 0.319 6.5 (1.1) 0.935 1.7 (1.6) 0.522 3.9 (1.6) 0.768 3.5 (1.2) 0.702 4.0 (1.2) 0.055 3.2 (1.0) 0.487 1.7 (0.8) 0.350
49歳以上 3.1 (0.7) 3.0 (0.7) 6.5 (0.9) 1.5 (1.2) 4.0 (1.2) 3.4 (1.2) 3.7 (1.2) 3.1 (1.0) 1.8 (0.7)
訪問看護師経験年数 6年以下 3.1 (0.6) 0.912 2.9 (0.7) 0.301 6.6 (0.9) 0.134 1.9 (1.5) 0.007 4.2 (1.5) 0.019 3.7 (1.2) 0.004 4.0 (1.2) 0.052 3.3 (1.0) 0.126 1.8 (0.8) 0.286
7年以上 2.9 (0.8) 3.0 (0.8) 6.4 (1.0) 1.3 (1.2) 3.7 (1.3) 3.2 (1.2) 3.7 (1.2) 3.1 (1.0) 1.7 (0.7)
役職有無 なし 3.2 (0.6) 0.301 2.9 (0.7) 0.971 6.7 (1.1) 0.095 1.8 (1.6) 0.040 4.1 (1.6) 0.334 3.6 (1.3) 0.260 3.9 (1.2) 0.397 3.3 (1.0) 0.211 1.8 (0.8) 0.627
あり 3.1 (0.8) 2.9 (0.8) 6.4 (0.9) 1.4 (1.2) 3.8 (1.2) 3.3 (1.1) 3.8 (1.2) 3.1 (1.0) 1.7 (0.7)
表3. 夜間オンコールによる精神的負担,身体的負担に影響を及ぼす要因
精神的負担 p値 身体的負担 p値
オッズ比 95%信頼区間 オッズ比 95%信頼区間
調整因子として,年齢を投入 p<0.05
オンコール担当回数/月 8回以下 1.00 1.00
9回以上 0.73 0.31 - 1.74 0.480 1.03 0.51 - 2.08 0.930
コールを受けた回数/月 2回以下 1.00 1.00
3回以上 2.51 1.05 - 6.00 0.040 2.44 1.20 - 5.00 0.014
緊急訪問した回数/月 1回以下 1.00 1.00
2回以上 6.76 0.54 - 3.64 0.490 1.56 0.72 - 3.39 0.270
看護師一人当たりのオンコール担当患者数 25人以下 1.00 1.00
26人以上 1.23 0.49 - 3.11 0.659 1.71 0.81 - 3.60 0.162
表4. 夜間オンコールによる睡眠の状況5項目が不良となるのに影響を及ぼす要因
睡眠の深さ p値 良眠感 p値 すっきり感 p値 睡眠満足感 p値 入眠困難感 p値
オッズ比 95%信頼区間 オッズ比 95%信頼区間 オッズ比 95%信頼区間 オッズ比 95%信頼区間 オッズ比 95%信頼区間
調整因子として,年齢を投入
オンコール担当回数/月 8回以下 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00
9回以上 0.81 0.39 - 1.70 0.579 0.75 0.39 - 1.42 0.371 0.88 0.45 - 1.71 0.704 0.82 0.42 - 1.59 0.553 0.86 0.45 - 1.64 0.648
コールを受けた回数/月 2回以下 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00
3回以上 0.79 0.38 - 1.65 0.526 0.96 0.50 - 1.83 0.891 0.97 0.50 - 1.90 0.929 0.89 0.45 - 1.77 0.749 1.10 0.57 - 2.12 0.773
緊急訪問した回数/月 1回以下 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00
2回以上 1.52 0.70 - 3.29 0.291 1.74 0.87 - 3.49 0.117 1.27 0.63 - 2.59 0.505 1.90 0.93 - 3.88 0.078 1.77 0.87 - 3.59 0.115
看護師一人当たりのオンコール担当患者数 25人以下 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00
26人以上 2.07 0.95 - 4.52 0.659 1.14 0.59 - 2.22 0.696 1.34 0.67 - 2.68 0.404 2.02 0.99 - 4.10 0.052 1.24 0.63 - 2.44 0.527

VI. 考察

今回の研究は,東北地方の4県の訪問看護事業所に勤務する訪問看護師を対象とした.事業所の経営主体は,全国調査12)では営利法人が40.3%を占めていたのに対し,本調査では医療法人が28.9%と最も多く,営利法人は18.2%であった.対象地域を東北地方に限定したことにより,訪問看護事業所の経営主体は全国平均とはやや異なる構成を示したものとも考える.勤務する看護師数や訪問看護利用登録者数は,全国平均13)の看護師数4.7人,利用者数61.4人と近似していたが,本調査では訪問看護利用者登録者数3~314人,オンコール利用登録者数0~207人と分布範囲が広く,事業所によっては利用者数の差が大きい現状がうかがえた.オンコール体制の整備状況は,14.5%が24時間体制を整えていないとの報告があるが13),本調査では,すべての事業所がオンコール体制を整えていた.しかし,回収率31.6%であったことから,オンコール体制を整えていない事業所は,研究の趣旨に適合していないと捉えて回答しなかった可能性もあると推測する.対象においては半数が役職に就いていたことから,全国平均と比較して年齢は高く,訪問看護師としての経験が豊かな対象であったと推測する.

本研究において,約8割の訪問看護師は夜間にオンコールを担当することを精神的に負担と感じており,約7割の訪問看護師は身体的に負担と感じていた.負担感の内容は明らかでないが,夜間オンコールを担当していない訪問看護師よりも担当している訪問看護師の方が「死や医療依存度の高い時に生じる葛藤」「利用者・家族との関係への不安」等を含む業務に関連した4因子のストレッサーを強く認知していたという報告14)や,「待機中に遠出できない」「いつ呼び出されるか分からない緊張を伴う」等15),待機中の日常生活に関連した負担があることが報告されている.24時間体制をとっていない訪問看護ステーションよりも24時間体制をとっているステーションの看護師で,消耗感が強い傾向にあるという指摘16)からも,夜間オンコールを担当することは,業務上のストレスや日常生活の制約に伴う精神的・身体的負担感が生じていると示唆される.また,ロジスティック回帰分析を行った結果からは,1ヶ月のコールを受けた回数が3回以上で精神的負担および身体的負担を感じる者が多いことが明らかになった.夜間のコール内容は,療養者の症状変化の不安やチューブ類および医療機器のトラブルなど多岐に渡る17,18).本研究では74.3%の看護師が一人でオンコールを担当していたが,多岐に渡るコールの内容から状況を瞬時にアセスメントし,緊急訪問や医師への連絡の必要性を自ら判断すること,そして適切な看護を提供することは,看護師にとって重責であるものと推測する.そして,このような経験を1ヶ月に3回以上経験することが,看護師に精神的負担および身体的負担を与える要因になっているため,コール回数を減らすための工夫や,コールを受けた後の休息や休日に対する配慮が必要であることが示唆された.

睡眠の状況については,オンコール担当日は睡眠時間が短く中途覚醒回数が多いこと,睡眠の深さ,良眠感,すっきり感,睡眠満足感,入眠困難感の得点が高いことから,オンコール担当日は非担当日に比べて睡眠の状況が悪いことが明らかになった.しかし,年齢調整後のロジスティック回帰分析の結果からは,オンコールの担当状況が睡眠の状況に影響を与えているとは言えなかった.睡眠の状況7項目の得点の差を検討した結果からは,オンコールの担当状況によって睡眠状況に差があることのほか,訪問看護師の経験が短い群や役職に就いていない群で,睡眠が不良となることが示され,訪問看護の経験を重ね熟達することによって睡眠への影響が軽減されるものと推察された.一般的な睡眠特性の生理的変化として,加齢に伴い睡眠は浅く効率が悪くなるとされている.しかし,上述したような訪問看護経験による睡眠への影響も関連し,睡眠が不良となる年齢調整オッズ比は有意ではない結果となったものと推測する.

以上のように,オンコールを担当することは精神的・身体的負担感をもたらすことや睡眠の妨げになっていることが示唆された.しかしながら,オンコール担当の手当については,「担当すると手当がある」のは66.8%にとどまり,コール対応や緊急訪問を行っても「手当がない」事業所もあった.また,ほとんどの事業所で夜間オンコール担当前の日勤や担当を終えた日勤は通常勤務となっており,桶河らの報告19)と矛盾はなく,負担感に対する処遇や,睡眠への影響に対する配慮が不十分である現状がうかがえた.訪問看護師の負担感は職業継続意思の関連要因であり20,21),処遇の不備はバーンアウトの関連要因である22)と指摘されている.在宅療養者を支える役割がますます期待される訪問看護師が,やりがいを持って働き続けるために,オンコール担当に対する手当や,担当した後の休息や休日を適切に設けることは重要な課題であると考える.

研究の限界と課題

本研究の結果は,対象を東北地方の4県の訪問看護事業所に勤務する訪問看護師としたこと,および調査票の回収率が31.6%であったことから,我が国の状況を示すものとして一般化するのは難しい.回収率が低かったことについては,職員の労働環境を整備する役割のある管理者や,オンコール担当による負担を日頃から感じている訪問看護師等,調査への関心が高い対象に偏った結果となった可能性が否めない.

睡眠の評価については,評価してもらう対象日を指定しなかったため,直近の「オンコール担当日」「オンコール非担当日」の睡眠を評価した者や,過去に最も印象に残る不良な睡眠を想起して評価した者もいると推測する.評価してもらう睡眠を具体的に指定し,また思い起こしによる情報バイアスが生じないよう,起床時にすぐに評価してもらう必要があったと考える.睡眠に対する主観には個人差もあるため,今後は生理学的データを用いて科学的に検証することも必要と考える.

本研究では,訪問看護師の夜間のオンコール担当と負担感,睡眠の状況に焦点を当てたが,オンコールを担当することは生活そのものへの制約が伴うことから,本人だけではなく家族も含めて様々な場面に広く影響するものと考える.今後は,オンコールを担当することによる負担の内容を詳細に把握し,今後ますます活躍が期待される訪問看護師が健康的に働くための勤務体制を整える上での方策を考えていきたい.

VII. 結論

1)訪問看護師の約8割はオンコールを担当することを精神的に負担と感じており,約7割は身体的に負担と感じていた.

2)1ヶ月のコールを受けた回数が3回以上になると,精神的負担および身体的負担を感じる者が多くなった.

3)オンコール担当日は非担当日に比べ,睡眠時間は短く,中途覚醒回数が多かった.また睡眠の深さ,良眠感,すっきり感,睡眠満足感,入眠困難感の得点が高く,非担当日に比べて睡眠が悪い状況にあった.

4)オンコール担当の負担感に対する処遇や睡眠への影響に対する配慮が十分になされていない現状が明らかとなり,オンコール担当に対する手当および休息や休日を適切に設ける必要があることが示唆された.

謝辞

本研究にあたり,調査にご協力いただきました訪問看護事業所の管理者及び訪問看護師の皆様に深く感謝申し上げます.

文献
 
© 2016 公益社団法人 日本産業衛生学会
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