産業衛生学雑誌
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総説
休業者に対する復職支援プログラムの有用性:システマティックレビュー
道喜 将太郎原野 悟品田 佳世子大山 篤小島原 典子
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2018 年 60 巻 6 号 p. 169-179

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抄録

目的:日本産業衛生学会関東地方会により2017年5月に公開された『科学的根拠に基づく「産業保健における復職ガイダンス2017」』のレビュークエスチョンの一つである「休業者に対して職場の復職支援プログラムは,復職に関する就業アウトカムを向上させるか.」について,システマティックレビューにより知見を集積することを目的とした.対象と方法:Pubmed,Cochrane Library,医中誌の3つのデータベースを用いて検索を行った.ガイダンス作成グループは,システマティックレビューの結果に基づき,Evidence to Decision frameworkを用いて推奨案を作成し,投票で推奨を決定した.システマティックレビューとメタアナリシスを疾患横断的に行い,これまで明らかになっているエビデンスを統合した.本システマティックレビューの研究計画はPROSPEROに登録されている(CRD42016048937).結果:筋骨格系障害に関しては5編,メンタルヘルス不調は6編の統合を行った.心臓疾患やがんについては適格基準に当てはまる文献はなかった.筋骨格系障害では,通常のケア群より作業療法群で早く復職する結果が得られた(HR 1.58[95%CI 1.26―1.97],-40.71日[95%CI -60.69―-20.72]).メンタルヘルス不調では,心理療法的介入による復職支援プログラム群は通常のケア群に比べて休業期間が有意に短かった(-18.64日[95%CI -27.98―-9.30日]).考察と結論:筋骨格系障害による休業に対する復職支援プログラムの介入では,リハビリテーションという腰痛への直接的なアプローチに加えて,職場の上司や産業保健スタッフとの複数回のミーティングを行い,作業環境管理,作業管理,心理的問題への取り組みや認知行動療法的手法を用いることで早期の職場復帰に役立つ可能性がある.メンタルヘルス不調においては,精神科医や心理職への相談が有効である可能性や,心理療法的アプローチで面談を行うことで休業日数の短縮の可能性が示唆された.また,職場復帰におけるリワーク・プログラムの重要性が明らかになった.ただし,日本で実施された研究はないため,これらの介入方法については,国ごとの産業保健の仕組みや文化の違いから単純に導入することが出来ない点で慎重な検討が必要である.今後,日本においてエビデンスレベルの高い研究が実施される必要がある.

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© 2018 公益社団法人 日本産業衛生学会
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