産業衛生学雑誌
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調査報告
がんを抱える労働者の治療と仕事の両立支援の取り組み状況:和歌山県内事業場の規模別比較から
森岡 郁晴寺下 浩彰宮下 和久生田 善太郎竹下 達也垰田 和史
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2019 年 61 巻 5 号 p. 159-169

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抄録

目的:がんを抱える労働者の治療と仕事の両立支援は十分とはいえない.そのため,本研究では,事業場におけるがんを抱える労働者の治療と仕事の両立支援の取り組み状況を事業場の規模別に明らかにし,がんを抱える労働者に対する職場改善を検討することを目的とする.対象と方法:和歌山産業保健総合支援センター及び地域産業保健センターがこれまでに支援した県内の事業場リストから無作為に抽出した770の事業場を対象に,無記名の質問票を郵送により配布した.質問票は,事業場,支援制度,就労中のがん経験者やがん治療中の労働者(以下,がんを抱える労働者),がんを抱える労働者の復職,がんを抱える労働者の復職や雇用の推進,回答者の職種について尋ねる内容とした.結果:質問票は188事業場から回収された(回収率:24.4%).小規模事業場(労働者数50人未満)のうちがん検診を実施または受診勧奨している事業場は55%であり,この割合は中規模(労働者数50–99人)や大規模(労働者数100人以上)の事業場と比較して高かった.治療しながら働くための支援制度がある事業場は約20%で,「時間単位の有給休暇制度」がある事業場は,中規模や大規模事業場より小規模事業場で多かった.正規労働者に対し病気休職制度がある事業場は,小規模事業場が51%であり,この割合は有意に少なかった.正規労働者に対し病気休職期間中に賃金の支給がある事業場は20%台であった.がんを抱える労働者が職場復帰を希望したら可能な事業場は80%以上であった.復帰が可能な条件は「主治医による復職可能の診断書が提出された場合」が最も多かったが,小規模事業場では「職場の同僚に受け入れ意思がある場合」が多かった.結論:がんを抱える労働者に対する職場改善として,がん検診の受診勧奨,時間単位の有給休暇や病気休職の制度化が重要となることが示された.

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© 2019 公益社団法人 日本産業衛生学会
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