産業衛生学雑誌
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調査報告
事業場におけるパートタイム労働者の定期健康診断実施状況
佐藤 ゆき 岩切 一幸佐々木 毅吉川 徹高橋 正也
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2021 年 63 巻 6 号 p. 310-318

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抄録

目的:パートタイム労働者数は年々増加し労働力の確保において欠かせない存在になってきていることから,その健康確保は今後の重要な課題である.そこで本研究ではパートタイム労働者の健康管理の一つである一般定期健康診断(定期健診)の実施状況について検討した.対象と方法:郵送によるアンケート調査を産業(業種)および事業場規模別の層化抽出法により全国14,000事業場を無作為抽出して実施した.解析は回収数4,718件から,不備を除いた4,652件(有効回収率:33.2%)を対象とし,パートタイム労働者は一般社員の所定労働時間の3/4以上(区分1),同1/2以上・3/4未満(区分2),同1/2未満(区分3)に分類した.結果:定期健診の実施率は正社員では97.2%であった.しかし,パートタイム労働者では所定労働時間が短いほど実施率が低く,区分3の者では32.2%であった.また,事業場規模が小さいほど定期健診の実施率は低く29人以下の事業場の区分3の者では27.9%と最小であった.更に,事業主による費用の全額負担の割合は正社員(93.7%)に対し,区分1(90.5%),区分2(87.7%),区分3(85.0%)とも低かった.考察と結論:事業場での定期健診実施率はパートタイム労働者の所定労働時間が短く,また事業場規模が小さいほど低かった.事業場における労働形態の多様化を踏まえた,定期健診のあり方を含む健康確保策対策の拡充が必要と思われた.

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© 2021 公益社団法人 日本産業衛生学会
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