2023 年 65 巻 2 号 p. 82-90
目的:看護職はゴム製品や薬剤等に触れる機会が多く,職業性アレルギーのリスクが高い集団といえる.そこで我々は今回,「看護職の職業性アレルギーと一次予防のための健康管理指針案」(以下,指針案とする)を作成し,臨床での活用の可能性と課題を明らかにすることを目的に質問紙調査を実施した.対象と方法:指針案の内容は文献等を参考にA. 職業性アレルギーの基礎知識 B. 看護職に多い職業性アレルギー疾患 C. 看護職における特定のアレルゲンによる職業性アレルギー D. 手湿疹と手のスキンケア E. 職業性アレルギーに対する健康管理とした.400床以上の同意が得られた80病院の看護管理者等各1名に質問紙調査を実施した.指針案で示した内容の理解度,方法を取り入れることに対する意見等を尋ねた.研究者所属の倫理委員会の承認を得て実施した.結果:30名から回答を得た.指針案で示した【職業性アレルギー】【看護職に多い職業性アレルギー】【手湿疹と手のスキンケア】については,理解できたと回答した者が70%を超え,だいたい理解できたと回答した者も合わせると100%であった.【作業管理】の内容を理解できた者は57%,取り入れたいと思った者は90%であった.取り入れたいと思ったができそうにないと回答した者は10%で,その理由は「全体周知と他職種も巻き込んだ取り組みが難しい」などであった.【作業環境管理】の内容を理解できた者は53%,取り入れたいと思った者は83%であった.取り入れたいと思ったができそうにないと回答した者は17%で,その理由は「アレルゲンのモニタリングを実際に行うのは難しい」「局所換気装置の設置は難しそう」などであった.考察と結論:指針案は,職業性アレルギーや健康管理方法の知識の提供に役立ち,臨床で活用可能であることが推察された.具体的に対策方法を取り入れるには,他職種を含め病院全体での理解と調整を図る必要があることが示唆された.