産業衛生学雑誌
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原著
尿中に含まれる抗がん薬の汚染拡大防止を目的とした吸収シートの評価
佐藤 淳也 横井 誠堀 沙也佳堀田 靖則
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2023 年 65 巻 3 号 p. 134-141

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抄録

目的:医療や介護領域においては,抗がん薬の汚染が問題となっている.特に,抗がん薬投与を受けた患者の尿中には抗がん薬が含まれる.抗がん薬を含む尿の排泄時に,尿とともに便器周囲に飛散した抗がん薬は,スリッパ裏に付着して拡散する.そこで,抗がん薬を含む尿を活性炭にて吸着し,抗がん薬の汚染拡大を防止する吸着シートを開発したので,その性能評価を行った.

対象と方法:方法として,人工尿で希釈したシクロホスファミド(CPA; 2,000 μg/mL),メトトレキサート(MTX; 6,000 μg/mL)およびパクリタキセル(PTX; 200 μg/mL)について 5 μL×20滴を市販の2種の医療用シート(ピタパシート;対照製品1,アブソケアシーツ;対照製品2)と開発シート(HDセーフシート-Neo:試験製品)上に滴下した.次にシート上から,塩化ビニル製スリッパで加重し,スリッパ裏の抗がん薬付着量を定量した.

結果:いずれのシートも使用しない場合,滴下した各抗がん薬(CPA,MTXおよびPTX)のそれぞれ平均31.5%,38.7%および50.5%がスリッパ裏に付着した.対照製品2に比べ,活性炭を含む試験製品では,CPAおよびMTX平均付着量は,有意に減少した(224 vs 2 μg,p < .050および2,235 vs 19 μg,p < .050).一方,PTX平均付着量には有意な差がなかった(35 vs 13 μg).

結論:活性炭は尿中に含まれる抗がん薬を吸着し,活性炭を含む吸着シートは,スリッパ裏への抗がん薬付着量を大きく低減したことから,尿中抗がん薬飛散に起因する汚染の拡大を防止できる可能性が示唆された.

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