産業衛生学雑誌
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メンタルヘルス不調の労働者支援における管理監督者との連携のための産業看護職による関係形成の構造
畑中 純子髙﨑 正子畑中 三千代
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論文ID: 2017-021-B

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抄録

目的:メンタルヘルス不調の労働者への支援では、産業保健スタッフと管理監督者がそれぞれの役割を果たし、連携することが求められる。しかし、他職種との連携にはいくつかの課題があり、困難なことも多い。連携を促進するには、効果的な相互作用を生じさせる必要があるとされ、そのための関係性を構築しなければならない。そこで、本研究は労働者支援において産業看護職が管理監督者との連携のために行っている関係形成の構造を明らかにすることを目的とした。

対象と方法:産業看護経験5年以上でメンタルヘルスの個別支援を行っている産業看護職11名を対象に、半構造化面接を実施した。分析には、山浦の質的統合法(KJ法)を用いた。

結果:関係形成の要素として示された最終ラベル(以下、ラベルのシンボルマークの事柄を≪ ≫で示す)は6つであった。産業看護職は管理監督者と連携が必要となる前あるいは後から≪日頃からの関係づくり≫を行い、面接等の場面では≪管理監督者に合わせた対応≫により,関係を築くようにしていた。そして、メンタルヘルス不調の部下に関わる管理監督者の不安や本音を共感して聴き、安心感を醸成できるように≪管理監督者の心を援助≫していた。また、産業看護職の専門性から職場での状況を判断して管理監督者が部下への関わり方を具体的に分かるように助言して≪管理監督者の行動を援助≫したり、管理監督者のみに負担が掛からないように関係者をコーディネートして≪管理監督者を周囲から援助≫していた。これらの援助は、事業場の体制や規則の中でメンタルヘルス不調の部下を支援する管理監督者の≪役割を明確にする組織づくり≫をすることで促進されていた。

考察と結論:産業看護職がメンタルヘルス不調の労働者支援の役割を遂行する前から管理監督者を尊重し感情を大切にして情緒的人間関係を形成したのは、対人援助においては人間関係の質がケアの質を決定することを理解していたからであろう。そして、その関係を生かして管理監督者を心・行動・周囲から援助して役割負担の軽減を図ることで、管理監督者から専門職としての産業看護職に対する信頼を得られたと考えられた。

産業看護職が管理監督者と連携するための関係形成は、連携の必要性の生じる前あるいは後から管理監督者との情緒的人間関係をつくり出し、それを基盤とした管理監督者への支援により信頼関係へと発展させるという構造であることが示唆された。

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