産業衛生学雑誌
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仕事中の強度別身体活動および座位行動を評価する簡便な質問紙の開発:職業性身体活動調査票(WPAQ)の妥当性および信頼性
福島 教照天笠 志保菊池 宏幸高宮 朋子小田切 優子林 俊夫北林 蒔子井上 茂
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論文ID: 2019-013-B

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抄録

目的:今日の技術革新に伴い仕事内容の機械化・自動化が進む職場環境では,体を動かさない,長時間座ったままで行う仕事が増えてきている。中高強度の身体活動不足および長時間の座位行動は健康に悪影響を及ぼすことが報告されており,職場におけるそれらの現状を詳細に把握する必要がある.そこで,労働者における座位行動を含む仕事中の身体活動および座位行動のブレイク(継続する座位行動の中断)を評価するための簡便な質問紙「職業性身体活動調査票(Work-related Physical Activity Questionnaire )」(以下WPAQ)を開発した.本研究の目的はWPAQの再検査信頼性と基準関連妥当性を検討することである.方法:フルタイムで働く工場労働者97名(うち女性10名)を対象に質問紙と加速度計による身体活動調査を実施し, その妥当性を検証した.WPAQでは通常の勤務時間およびその時間中の座位時間,立位時間,歩行時間,重労働時間の割合を尋ねた.加えて,座位行動のブレイクを評価するため,座位行動の1回あたりの平均継続時間を尋ねた.また,機縁法により新規に募集した54名に対し,約10日の間隔を空けて同一の質問を繰り返す再検査を実施し, その信頼性を検証した.妥当性は順位相関係数(Spearman’s ρ)を,信頼性は級内相関係数(intraclass correlation coefficients:ICC)および平方重み付けkappa係数(Cohen’s kappa with quadratic weights)を算出し評価した.結果:加速度計データを妥当基準とし,WPAQで評価した強度別の各活動時間との妥当性は,それぞれの強度の身体活動時間との関連において正の相関を示し,重労働時間を除いてすべて有意であった(仕事中の座位時間:ρ=0.69,立位時間:ρ=0.66,歩行時間:ρ=0.39).仕事中の座位行動のブレイク評価において,WPAQで評価した座位行動の1回あたりの平均継続時間は加速度計データとの間に弱いながらも有意な正の相関を認めた(ρ=0.27).再検査信頼性は良好(座位行動を含む身体活動:ICC=0.59-0.79,座位行動のブレイク;Cohen’s kappa with quadratic weights=0.84)であった.結論:本研究で開発したWPAQは,仕事中の強度別身体活動および座位行動の測定,ならびに座位行動のブレイク評価において許容しうる水準の信頼性,妥当性を示した.労働者の健康影響に関連する仕事中の身体活動不足,長時間の座位行動,および継続する座位行動(少ないブレイク)は回避することが困難な職業性曝露と考えられ,その全ての評価を可能とするWPAQは職場の健康増進対策を講じるうえで実用的なツールである.

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© 2019 公益社団法人 日本産業衛生学会
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