産婦人科の進歩
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原著
骨盤位における胎位変換に影響する因子の臨床統計学的検討
早川 陽子辻本 大治大石 哲也望月 眞人
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2003 年 55 巻 1 号 p. 11-17

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抄録

単胎における骨盤位は,妊娠中期で約30%にみられるが,大半が自己回転し,妊娠末期には3~4%まで減少する.妊娠末期にみられる骨盤位は本来ならば自己回転するものが,なんらかの抑制因子により生じるものと推測される.そこで,自己回転抑制因子を明らかにするべく母体因子と胎児因子について臨床的検討を加えた.
 妊娠25週から33週の間に骨盤位と診断された単胎妊娠73例のうち,自己回転群と非自己回転群について,母体因子(母体体型,骨盤の大きさと傾斜角,分娩回数),胎児因子(胎位,胎児の大きさ),胎児付属物因子(羊水量,臍帯長,臍帯巻絡の有無,胎盤付着部位)などを比較検討し,自己回転との関連性を分析した.73例中68例が妊娠34週までに自己回転し,自己回転率は93%,非自己回転率が7%であった.母体因子のうち母体年齢,身長,分娩回数,骨盤の大きさに関しては自己回転群と非自己回転群の間で差を認めなかったが,母体体重,BMI,骨盤傾斜角に関しては非自己回転群の方が大きい傾向にあった.胎児因子のうち胎位に関しては,非自己回転群で単殿位の比率が高い傾向を示したが,有意差は認められなかった.診断時平均EFBWとBPDはともに非自己回転群で有意に高値であった.胎児付属物因子のうち羊水量,臍帯巻絡の有無,胎盤の厚みに関しては自己回転群と非自己回転群で差を認めなかったが,臍帯長は非自己回転群で自己回転群に比して平均4cm短かった.胎盤付着部位は非自己回転群で子宮角付着の頻度が明らかに高かった.平均分娩週数は非自己回転群で有意に早かったが,平均出生児体重は両群で差を認めなかった.分娩様式に関しては,非自己回転群で帝王切開術の比率が有意に高かった.
 以上の成績より,骨盤位における自己回転を抑制する因子としては,母体の肥満と大きい骨盤傾斜角,胎児が単殿位であること,週数に比して大きい胎児,短い臍帯長,子宮角付着胎盤であることが推察される.症例ごとにこれらの因子を詳細に分析し,個々の症例に適した管理を行うことは骨盤位妊娠を適切にマネージメントするうえできわめて重要であり,妊娠34週以前にあえて外回転術を全症例に施行する必要性はないと思われる.〔産婦の進歩55(1):11-17,2003(平成15年2月)〕

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© 2003 近畿産科婦人科学会
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