2013 年 65 巻 3 号 p. 261-267
抗てんかん薬(AED)が,胎児に対する催奇形性のみならず,知能や行動への長期影響を有することが明らかにされ,てんかん合併妊婦に対して可能な限り低リスク・低用量のAED処方が求められている.一方,治療薬物モニタリングは,個々の症例における至適投与量を設定するうえで限界がある.母児のリスクを最小限にするためには,妊娠前に臨床経過に基づいた最適の投与量が設定されているべきであるが,非計画的な妊娠に遭遇することがしばしばある.今回われわれは,最適の投与量が設定されていない状態で妊娠に至った特発性全般てんかん合併3症例を経験した.胎児リスクを低減すべく,発作抑制の経過,血中濃度,および脳波所見から総合的に判断して,AED投与を必要最小限にするようなてんかん合併妊娠の管理を試みた.2症例においては,妊娠初期に多剤から単剤療法に変更すること,あるいは多剤療法下で高用量の薬剤を減量することにより,胎児リスクを低減した.妊娠経過や児の短期予後も正常であった.1症例においては不正な服用状態のうえに薬物減量が重なって,妊娠中に発作が発生した.このような管理のためには,てんかん専門医とのより緊密な連携,患者およびその家族に対する十分な説明が必要であると考えられた.〔産婦の進歩 65(3):261‐267,2013(平成25年8月)〕