産婦人科の進歩
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症例報告
回旋した重複腟をもつHerlyn-Werner-Wunderlich症候群(重複子宮,重複腟,片側腟閉鎖,同側腎無形成)の1例
吉田 彩土井田 瞳角 玄一郎中村 友美杉本 久秀安田 勝彦
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2013 年 65 巻 3 号 p. 268-276

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抄録

今回,われわれは女性生殖器奇形のなかでも非常にまれなHerlyn-Werner-Wunderlich (HWW) syndromeを経験したので報告する.12歳の少女,月経時に下腹部痛と尿閉を訴え近医を受診したところ骨盤内嚢腫ならびに傍腟嚢腫と診断され,精査・加療目的で当科に紹介となった.経腹ならびに経腟超音波検査では膀胱下方に巨大な嚢腫と正常大の子宮を認めた.傍腟嚢腫を穿刺し血性粘液を吸引除去したところ症状は消失した.その1週間後に骨盤部MRIを施行したところ重複子宮と重複腟を認めた.重複腟は恥骨中央の高さで90度右回旋し,右腟は腹側(尿道直下)に左腟は背側(右腟直下)に移動していた.腎盂尿管造影ならびに超音波を施行したところ右腎臓ならびに右尿管を認めなかった.以上の所見ならびに経過から90度回旋した重複腟をもつHWW症候群と術前に診断することができた.その後,腟中隔切除術を施行し閉塞されていた右腟腔を開口したところ小さな右子宮口を確認できた.術後経過は順調で以後月経時に下腹部痛や尿閉を起こすことはなくなった.思春期の少女が月経時に下腹部痛や尿閉を訴え,傍腟嚢腫と骨盤内嚢腫を伴う場合,HWW症候群のような女性生殖器奇形が存在することを念頭に置くべきである.適切な治療には適切な診断が必要であり,その診断には超音波検査,腎盂造影,MRIなどの検査法が有効である.そのなかでも穿刺吸引前後の超音波検査は,HWW症候群の診断に重要な役割を担い,MRIは確定診断に最も有効である.〔産婦の進歩65(3):268‐276,2013(平成25年8月)〕

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© 2013 近畿産科婦人科学会
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