産婦人科の進歩
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症例報告
妊娠後期に羊水過多を呈した鰓弓症候群の1例
月岡 美穂橘 大介山田 詩緒里中野 朱美寺田 裕之斉藤 三佳古山 将康石河 修
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キーワード: 鰓弓症候群, 羊水過多
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2013 年 65 巻 3 号 p. 290-294

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抄録

鰓弓症候群は,第一第二鰓弓由来組織の形成不全を呈する先天異常で,小耳症・下顎形成不全を主徴とする疾患である.今回,妊娠後期に羊水過多を認め,出生後に鰓弓症候群と診断された症例を経験したので報告する.39歳,初産婦.既往歴に特記すべきものなし.妊娠初期より当科にて妊娠管理を行っていた.妊娠35週より羊水過多を認めたが,胎児消化器系疾患やその他の異常を示唆する所見は認めなかった.母体の下腿浮腫増強を認めたため,40週0日入院,この時点のAFIは25.1cmであった.40週4日,胎児心拍数図にて遅発一過性徐脈の出現を認め,胎児機能不全の適応で全身麻酔下に緊急帝王切開術を施行し,2602gの女児(Apgar score1分後1点,5分後6点,臍帯動脈血液ガスpH7.168,BE-9.6)を娩出,新生児仮死を認めたため人工呼吸管理となった.児は,両側巨口症,高口蓋,耳介低位,小下顎症,両側副耳頸耳を認め,鰓弓症候群と診断されたが,呼吸状態は速やかに改善し生後1日目に抜管となった.両側巨口症のため経口哺乳が困難であり,出生後3日目までは経管栄養を要し,その後はシリンジ注入による哺乳管理を行った.出生後3カ月時に形成外科にて両側巨口症,両側副耳頸耳の手術が行われた.現在,生後1年4カ月で身体発育・精神発達はともに良好である.鰓弓症候群症例では,4割近くに嚥下障害による羊水過多を認めるという報告もあり,原因不明の羊水過多を認めた場合,本疾患も念頭におき口腔およびその周囲の形態的異常の有無を観察する必要があることが示唆された.〔産婦の進歩65(3):290‐294,2013(平成25年8月)〕

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© 2013 近畿産科婦人科学会
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