産婦人科の進歩
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原著
血清クレアチニン値上昇と術後尿管損傷の相関に関する後方視的検討
竹田 満寿美三好 愛金尾 世里加直居 裕和横井 猛
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2018 年 70 巻 3 号 p. 263-269

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抄録

【目的】婦人科手術において,術後尿管損傷は頻度の高いものの1つである.術後の血清クレアチニン(Cre)値と尿管損傷については成書によれば,血清Cre値が0.8mg/dl以上であれば術後尿管損傷を疑うべきであるとの記述があるが,術前後の血清Cre値の上昇と尿管損傷の関連性には言及されていない.今回われわれは,術前後の血清Cre値の上昇と尿管損傷に関して後方視的に検討した.【方法】平成25年1月1日~平成28年5月31日までの41カ月間に当院で実施した子宮全摘出術1107例に対し,病歴を基に後方視的に調査した.【成績】術後1日目に血清Cre値が上昇していた症例は1107例中198例,血清Cre値が上昇していなかった症例は909例であった.4例(0.36%)に術後尿管損傷が認められ,その全例において,術後1日目の血清Cre値の上昇を認めた.術後1日目に血清Cre値が上昇していない症例においては,その後,尿管損傷を発症した症例は1例も認めなかった.術後尿管損傷における術後1日目の血清Cre値上昇の感度は100%,特異度は82%であった.【結論】術後1日目の血清Cre値が上昇していない場合,術後尿管損傷が発生する可能性は非常に低い.それに対し,術後1日目の血清Cre値が上昇している症例では術後尿管損傷合併の発生に注意する必要がある.[産婦の進歩70(3):263-269,2018(平成30年8月)]

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© 2018 近畿産科婦人科学会
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