産婦人科の進歩
Online ISSN : 1347-6742
Print ISSN : 0370-8446
ISSN-L : 0370-8446
症例報告
妊娠に合併した子宮頸部絨毛腺管癌の1例
松田 洋子森下 紀種田 健司佐藤 浩田口 奈緒廣瀬 雅哉
著者情報
ジャーナル 認証あり

2020 年 72 巻 1 号 p. 8-13

詳細
抄録

子宮頸部絨毛腺管癌はまれな子宮頸部腺癌の一亜型である.予後は比較的良好とされているが進行例では予後不良であり,早期診断治療が望まれる.本論文では,経過観察中に妊娠し,妊娠後の生検で子宮頸部上皮内絨毛腺管癌と診断した症例を経験したので報告する.症例は34歳の未産婦で,子宮頸部細胞診high-grade squamous intraepithelial lesion (HSIL)にて当院に紹介となり,コルポスコピー下組織診で病変を認めず経過観察としていた.半年後の受診時には前医ですでに妊娠と診断されていた.子宮頸部細胞診でHSILであったためコルポスコピーを行ったところ,子宮頸管腺領域に2-3mmのわずかに隆起する病変を認め,同部位の生検で絨毛腺管癌と考えられた.妊娠15週4日に子宮頸部円錐切除術と子宮頸管縫縮術を施行した.病理組織診断では子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)3と上皮内絨毛腺管癌を認めた.断端は陰性であった.分娩までは細胞診などで慎重に経過観察を行い,妊娠39週に自然経腟分娩となった.子宮頸部円錐切除術後10カ月が経過し,再発所見は認めていない.妊娠前の他院の細胞診を再検討したところ,一部にごく軽度の異型を呈する腺上皮細胞を認めた.コルポスコピーでのわずかな所見を見逃さず,初期の子宮頸部絨毛腺管癌を診断することができ,子宮頸部円錐切除術を行うことにより妊娠継続が可能となった.一方,妊娠前の子宮頸部細胞診では腺系の異型細胞が指摘されておらず,妊娠中の子宮頸部病変の管理については子宮頸部絨毛腺管癌の存在も念頭に置く必要があると考えられた.〔産婦の進歩72(1):8-13,2020(令和2年2月)〕

著者関連情報
© 2020 近畿産科婦人科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top