2016 年 22 巻 p. 29-40
本研究は、A地区在住の健康な高齢者の認知症および認知症予防に関する認識と、予防行動の実態を明らかにし、支援の在り方について示唆を得ることを目的とした。A地区在住の高齢者8名を対象とし、半構成的面接による質的記述的分析を行った。その結果、【肯定的なかかわりの必要性】、【正しい知識の必要性】、【情報収集の必要性】、【症状の不明確さ】、【予防の必要性】、【病院受診の必要性】、【診断後の対策の必要性】、【他者の支えの必要性】、【ソーシャルサポートの必要性】という9つのカテゴリが生成された。A地区在住の健康な高齢者8名は認知症予防への関心が高く、予防の必要性を理解し、様々な社会活動を行っていた。その一方で、認知症予防に対して、「情報がありすぎて不安」という意見もあった。さらに、家族が認知症であることを隠し、現状把握ができないことや、個人情報保護法などにより情報共有ができていないことがわかった。意識や関心のある人に対しては、個人のレベルに合わせた知識を共有する必要があり、地域の特性や地域差を把握するためにも、予防だけでなく、コミュニティ、地域の在り方を整備する必要があることが示唆された。