山陽論叢
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形成的アセスメントと成績評価の明確な分離
心理学実験レポートの評価における試み
髙橋 功
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2025 年 31 巻 p. 27-42

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抄録
心理学実験科目において,成績評価の枠組みから実験レポートの評価を切り離し,課 題の遂行量のみを成績評価の材料とする方法を試みた。これにより,レポートの評価が形成 的アセスメントとして有効に機能することを意図した。しかし,この方法は「レポートを提 出さえすれば単位が得られる」と誤解され,教育の質を損なう懸念があった。そこで,介入 前後における実験レポートの得点を比較した。その結果,得点の低下は見られず,学修を大 きく損なうことなく本評価法を運用できる可能性が示唆された。また,成績評価上の遂行状 況を受講者が把握しやすいように,LMS(Moodle)の機能を用いて,各課題の遂行に応じ たデジタルバッジを付与した。事後調査における因子分析の結果,「楽しさ」「自己調整」「学 習阻害」の3 因子が抽出された。「楽しさ」と「自己調整」の平均項目得点が大きい一方で 「学習阻害」の平均項目得点は小さく,バッジが学修の自己調整を促進する可能性と,ネガ ティブな影響は限定的であることが示唆された。本研究の限界として,学修態度の変化を直 接測定していない点と,評価の客観性が担保されていない点が挙げられる。今後の課題とし て,学修態度の事前・事後比較と,第三者による評価を導入した効果の検証が求められる。
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