山陽学園短期大学紀要
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分枝鎖α-ケト酸脱水素酵素複合体E2成分のインタードメインリンカーの構造と機能
小野 和夫
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2007 年 38 巻 p. 1-10

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抄録

分枝鎖α-ケト酸脱水素酵素複合体(branched-chain α-keto acid dehydrogenase complex,BCKADH)は、3種類の触媒酵素成分;デカルボキシラーゼ(E1,α2β2)、ジヒドロリポイルトランスアシラーゼ(E2)、リポアミドデヒドロゲナーゼ(E3,α2)、およびE1αのリン酸化/脱リン酸化によりBCKADH活性を調節する2種類の調節酵素成分;BCKADHキナーゼ、BCKADHホスファターゼの計5種類の成分酵素からなる。このうち触媒酵素成分は、E2サブユニット24分子が集合したE2コアに12分子のE1と6分子のE3が非共有結合した構造をとる。BCKADHの形成と触媒反応を可能にしているのは、E2サブユニットのマルチドメイン構造(リポイルドメイン、E1/E3結合ドメインおよびインナーコアドメイン)である。このうちリポイルドメインはリポ酸が共有結合したリポイルリシン残基をもち、これは可動性アームとしてE1、E2およびE3の活性中心間を順に移動して中間生成物の連続的受け渡しを行う(active-site coUpling)。E2サブユニットの3つのドメインは2つのインタードメインリンカー(リンカー)で接続されている。鳥類(ニワトリ)や魚類(ニジマス)のE2サブユニットの1次構造は全体として哺乳類と高い相同性を示すものの、リンカーの構造は特徴的で、その残基数は哺乳類より11多く、2および9つの連続する種特異的な配列として2つのリンカーに局在していた。このためニワトリやニジマスのE2はE1結合能が哺乳類E2より低く、また再構成した複合体のBCKADH活性も哺乳類に比べて低かった。これらの結果は、リンカーが単に機能ドメインを繋ぐだけではなく、その構造はE1結合親和性やリポイルドメインのactive-site couplingにも影響することを示している。

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