抄録
本研究では,高度に除湿された低温空気を穀物の品質保持乾燥に利用することを検討した。主にコンプレッサとペルティエ素子を使った除湿器で構成される小型除湿空気乾燥試験装置の乾燥性能を湿潤な気象条件のもとで大麦と小麦を供試して試験した。乾燥装置の品質保持効果については香り米を供試して試験した。試作乾燥装置によって,既往文献の報告と同程度以下の低温・低湿度の空気が得られた。空気流量が5 L/min のとき,相対湿度74.9%,RH の外気を取り込んで,17.2%,RH まで排出空気の相対湿度を57.7%低減させることができた。取込空気と排出空気の相対湿度の差は空気流量の増加にほぼ比例して減少した。大麦の乾燥実験において,含水率35%,d.b. から15%,d.b. の範囲では,空気流量が5 L/min と20 L/min の両者ともほぼ同様に乾燥が進んだが,15%,d.b. 以下になると空気流量20 L/min の場合は大きく乾燥速度が低下した。しかし,今回の実験では除湿空気の流量が乾燥速度に及ぼす影響を明確に示すことはできなかった。香り米の香り成分 AcPy の保持効果を乾燥装置の乾燥温度を変えて,比較検討した。その結果,除湿低温乾燥装置によって AcPy 成分は初期成分濃度と同程度に保持できることが確認された。