生物物理化学
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調製用ディスク電気泳動法によるイヌ血清リポ蛋白質の研究
和田 光夫南園 忠赤松 明森田 高生藤井 英雄三瀬 淳一
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1975 年 19 巻 5 号 p. 367-371

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抄録

調製用ディスク電気泳動法を用い,ヒト血清リポ蛋白質分析用ポリアクリルアミド系によるイヌ血清リポ蛋白質の分離回収を試みた.著者らのゲル系では血清リポ蛋白質をスダン黒によって前染色するが,これがリポ蛋白質各分画の正確な分離と回収を容易なものとした.前染色は分離回収分画のリポ蛋白質としての分析あるいはリポ蛋白質脂質構成の分析の障害とはならないと考えられた.
イヌ血清リポ蛋白質は4種,即ちαリポ蛋白質の亜分画3種(alb,α-1,α-2リポ蛋白質)およびβリポ蛋白質に分離された.イヌ血清リポ蛋白質の基本成分はα-1リポ蛋白質であった.電気泳動分離後のリポ蛋白質およびそれぞれの脂質成分はポリアクリルアミアドゲルから回収され,その後の分析を可能とした.各リポ蛋白質の脂質構成はそれぞれに特徴的であり,リポ蛋白質相互間の鑑別を可能とするものであった.リポ蛋白質相互間の汚染はリポ蛋白質脂質の分析ならびにリポ蛋白質回収分画の免疫電気泳動の結果からみて,たとえあるとしても僅少のものと思われた.しかしながら,イヌ全血清とリポ蛋白質回収分画の抗イヌ・ウサギ血清に対する反応には部分的な不一致がみられ,リポ蛋白質抗原成分の各リポ蛋白質分画への複雑な分布を示唆しているものと思われた.結論として,本報に述べた方法を用いイヌ血清リポ蛋白質についての更に詳しい検討を行ない得るものと考えられた.

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© 日本電気泳動学会
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