1988 年 32 巻 1 号 p. 39-43
平板ゲルをガラスなどで裏打ちし補強すると, これを用いた電気泳動分離ならびに染色などの操作が容易になる. しかしながら, この裏打ちにより通常のコロイド状染料の吸着に基づく染色反応は遅くなる. 本研究ではガラス基板で裏打ちしたポリアクリルアミドゲル中に泳動分離した蛋白質にヘミンを吸着させ, そのペルオキシダーゼ様の触媒活性を利用して高速に蛋白スポットを染色する方法を開発した. すなわち, このヘミン染色法と名付けた方法では, 蛋白質に吸着したヘミンが過酸化水素の存在下で2,6-キシレノールと3,3'-ジアミノベンチジンの酸化重合反応を触媒する. この反応により蛋白質分子上で染料があらたに合成され染色される. 本研究ではこの染色反応の反応条件の最適化を行い, 45分間で蛋白質が染色されることを見出した. 本論文ではヘミン染色法とクーマシーブルー染色法の比較結果についても言及する.