生物物理化学
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血清ALPアイソザイムのセ・ア膜とPAGディスク電気泳動法による成績の比較検討
消化器系疾患を中心に
菊野 晃北田 増和渡辺 伸一郎竹内 正菰田 二一坂岸 良克
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1994 年 38 巻 1 号 p. 31-36

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抄録

ポリアクリルアミドディスクゲル (PAGディスク法) とセルロース・アセテート膜 (セ・ア膜法) によるアルカリ性ホスファターゼアイソザイムの差異を比較した. PAGディスク法ではセ・ア膜法に比し, 高分子型ALPを高頻度に検出できた. セ・ア膜法では高分子型ALPが pre-liver 型ALP領域に泳動されたが, PAG法では2種類の retained ALPに分別された. すなわち, 一方は, 濃縮ゲルの上部 (retained 2 R2) に, 他方は, 濃縮ゲルと分離用ゲルの間 (retained 1 R1) に検出され た. 血清を2.0% Triton X-100で処理すると, 2種類の retained ALPは biliary 型ALP領域に収束した1本のバンドとして検出されるようになった. また血流中のR1とR2 ALPの含量は各消化器系疾患の病態と相関していた. つまり, 良性の肝・胆道胆管系疾患では, R2にALPがより多く検出されるのに対し, R1 ALPは, 胆嚢癌や膵臓癌でより多く検出された. retained ALPを2% Triton X-100存在下で抽出・PIPLC処理し, この retained ALPを再度PAG法でALPアイソザイムの臓器由来を判定したところ, R2では小腸型・骨型および肝型ALPが含まれていたが, R1では肝型ALPが主成分であった.
これらの知見から, retained ALPは, 臨床上R1とR2 ALPの臓器特異性から障害臓器を特定する有効な情報として利用可能と考えられた.

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© 日本電気泳動学会
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