抄録
中小企業本質論ではこれまで問題性,発展性,両者の統合物として弁証法的に議論が発展してきた。これまでの本質論は,大企業など親企業との取引のなかで,あるいは中小企業内部に潜む問題として本質を捉えてきた。しかし,中小企業は地域・社会の中で活動しており,そこに本質を求めた結果,地域・社会に対する「利他的共生性」を有していることが中小企業の本質であることを導出した。また,この本質導出の過程で,日本の中小企業独自の活動である「利他的CSR」活動についても明らかにした。
さらに,今回導出した利他的共生性を有する中小企業を,①地域づくりタイプ,②ダイバーシティタイプ,③包摂タイプの3 つにタイプ分けしたが,これら利他的共生性を有する中小企業の活動により,地域・社会のウェルビーング向上に貢献していることから,中小企業のレゾンデートルに新たな意義を与えた。