2020 年 54 巻 1 号 p. 2-14
化粧品には,使用感や安定性の改善などのさまざまな目的のために多くのゲル化/増粘剤が利用されている。水溶性の増粘・ゲル化剤はその種類も多く広く使われているが,オイルに溶液に添加できる増粘・ゲル化剤は圧倒的に少ない。これら既存のオイルゲル化剤は,固体に変化させる(=ゲル化)ことはできるが,流動性を保持しながら高粘度化させる(=増粘)ことは困難である。また既存のオイルゲル化剤は,増粘できるオイルの種類が限定的あり,増粘するためにある程度多くの添加量が必要になるなどの欠点がある。そこで今回,多くの種類のオイルを少量の添加で増粘でき,しかも増粘したときに透明にできるようなまったく新しいオイル増粘剤を開発した。その増粘剤分子の設計においては,非対称構造の導入による親油性の調整が重要な役割を果たしていることを見出した。この新たなオイル増粘剤はパラフィン油やエステル油などの幅広い種類のオイルに適用可能であり,さまざまな化粧品の感触を改良し得るものである。