抄録
表皮角質層の水分保持が皮膚を健やかに保つために重要であることは古くから知られている。近年表皮角質層の水分保持に角質細胞間脂質が重要であることがあきらかとなって久しい。これら角質細胞間脂質構成成分の内, セラミド, コレステロール, コレステリル誘導体は細胞間でのラメラ形成能に深く関与しており, 形成されたラメラ間に水分保持し, 機能を発揮しているとされている。今回, 我々は, 細胞間脂質であるコレステリル誘導体に着目し, 特にコレステリルエステル類の荒れ肌に対する有用性を評価した。有用性評価は, ラウリル硫酸ナトリウムにより荒れ肌を誘発し, 誘発された荒れ肌部位にコレステリルエステル類を塗布し, 被検部位の角質水分量と経皮水分損失量の経時変化から評価した。その結果, コレステリルエステル類のうち, アシルグルタミン酸コレステリルエステル (AGCE) は荒れ肌の水分保持機能に対して優れた回復効果を示した。らに, 実際の表皮脂質複合体を想定したモデルとセラミド代替としてAGCEを配合したモデルは荒れ肌に対して同等の効果を示した。