日本化粧品技術者会誌
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複機能性リン脂質ポリマーpoly (MPC) の角層結合水増加作用と乾燥性荒肌および乾燥性皮膚疾患に対する効果
大場 愛黒田 秀夫釈 政雄高橋 慎一
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1996 年 30 巻 4 号 p. 428-440

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抄録
従来の保湿剤は, 角層水分量を左右する角層の2つの重要な機能 (水分蒸散防御機能と吸保湿機能) のどちらか片方のみを昴進するものであったため, 効果が限られていた。
以前我々は両親媒性の高分子poly [2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine (MPC)] を合成し, そのユニークな特性を見出すとともに健常女性皮膚に対する使用試験で角層水分量の増加, 経表皮水分蒸散量の減少, 皮膚表面状態の改善が認められたことを報告した。
角層水分には自由水と結合水があり, 病的角層の結合水量は正常角層より少ないことから角層の水分保持能に対する結合水の重要性が示唆されている。今回, poly (MPC) は角層内に浸透して角層細胞間脂質やその他の角層水分保持成分に働き結合水を増加させることがわかった。その効果は従来の保湿剤よりも優れており, 特にラメラ構造に対する作用では自由水出現後も結合水量を増加させるという従来の保湿剤にはないpoly (MPC) 独特の効果を示した。そしてpoly (MPC) の保湿剤としての優れた効果は, 従来の保湿剤では充分な効果が認められなかった乾燥性荒れ肌や乾燥性皮膚疾患への使用試験において確認され, poly (MPC) が角層の2つの機能の両方に対して増強作用を示す有用な素材であることが示された。
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