日本化粧品技術者会誌
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天然保湿成分であるL-ピロリドンカルボン酸 (L-PCA) のNO産生調節による血流促進効果
小笠原 和子瀧野 嘉延北澤 学坂本 一民岡野 由利正木 仁安井 裕之桜井 弘
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2003 年 37 巻 4 号 p. 287-292

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抄録

一酸化窒素 (NO) は皮膚血流量の調節や血管の弛緩などに重要な役割を果たしていることが知られている。NOは生体内でNO合成酵素 (NOS) の作用によりL-arginine (L-Arg) から合成される。われわれはヒト血管内皮細胞において, (1) L-ピロリドンカルボン酸 (L-PCA) は濃度依存的に, NO産生量を促進する, (2) L-PCAは血管内皮細胞へのL-Argの取り込みを促進する, そして (3) この促進効果はカチオン性アミノ酸トランスポーター (CAT) 阻害剤であるL-NMMAによって抑制されることを見出した。これらの結果にもとついて, L-PCAはCATを介したL-Argの細胞への取り込みを促進することにより, NO生成量を適度に増加させ血流を調節していることがわかった。しかし, これらのNO合成促進およびL-Arg取り込み促進効果はL-PCAにのみ見られ, D-体には見られなかった。さらに, ヒト前腕内側部での閉塞パッチテストにおいても, L-PCAは皮膚の赤み・血流量を一時的に増加させることが認められた。これまでL-PCAは天然保湿因子の主要な成分の一つであることから保湿を目的としたスキンケアに広く用いられてきたが, 血流促進を目的とした用途においても有用であることが明らかとなった。

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