2022 年 50 巻 4 号 p. 260-265
破裂内頚動脈血豆状動脈瘤は,急性期直達手術,血管内手術,待機ともリスクが高い重症疾患である.急性期ステントを併用して血管内治療を行った.症例は,くも膜下出血で発症した6例で,grade Vが4例,grade IとIIが1例ずつであった.くも膜下出血診断後は速やかに降圧,鎮静,挿管人工呼吸管理とし,内頚動脈血豆状動脈瘤の診断後には,深鎮静で血圧を120mmHg未満に管理した.発症から72時間以内に,ステント併用コイル塞栓術を全身麻酔で行った.直前に抗血小板剤をローディングし,動脈瘤を中心にステントを留置,ステント外から瘤内に留置したマイクロカテーテルから径2mmあるいは1.5mmの柔らかいコイルを留置し,ステントをもう1つ重ねて留置した.術後は瘤の再増大に注意しながら脳血管攣縮治療を行った.3例では1度の塞栓術で再発なく経過,3例では追加塞栓を施行した.3カ月の時点で,grade IとIIの2例はmRS 0,grade Vの4例のうち1例はmRS 0の転帰良好であったが,他の3例はそれぞれmRS 3,4,6であった.死亡は再出血が原因であった.2週目以降に動脈瘤の再増大をきたした症例は1例のみであった.
血管内治療においては,コイルは小さく柔らかいものを選択し,瘤壁にストレスをかけずにステント2本による整流効果に期待することが重要と考えられた.術後も鎮静を併用して厳重に血圧管理し,頻回に脳血管撮影でフォローする必要がある.ステント併用コイル塞栓術は再破裂予防に有効な可能性があり,直達手術の困難さを考慮すると選択肢の1つとして考えてもよいと思われた.