2022 年 50 巻 6 号 p. 467-473
てんかん発作を消失させる目的で海綿状血管腫の摘出を行う場合には,術前に血管腫がてんかん発作の原因病変であることを確認することが重要である.MRIなどの画像検査で海綿状血管腫が認められても,その病変が発作抑制を目的としているてんかん発作の原因でない可能性もあり得る.
血管腫がてんかん発作の原因病変であると診断するためには,MRIなどの画像検査での局在,脳波でのてんかん性異常波の分布,そして発作症状が一致するかどうかが重要なポイントである.発作症状が画像所見や脳波所見と一致しない場合には,長時間ビデオ脳波同時記録によって発作時脳波所見と発作症状を確認したり,症例によっては,頭蓋内電極を用いて慢性硬膜下記録を行い,脳波上の発作起始部と海綿状血管腫の局在との関係を確認したりする必要がある.
手術においては,海綿状血管腫そのものにはてんかん原性が存在しないので,周囲のヘモジデリン沈着部位を含めて摘出する必要がある.機能野から離れている場合には,脳回ごとに血管腫を含めて切除する方法もある.また,側頭葉内側部に存在する海綿状血管腫の症例では,海馬扁桃体もてんかん原性に関係している可能性が高いので,血管腫の摘出と同時にこれらを切除することにより,術後の発作消失率を向上させることができる.